研究概要 |
cdc2関連キナーゼ(cdc2‐related protein kinases;CDC2,CDK2など)はサイクリンと複合体を構成し、真核生物の細胞分裂制御において決定的に重要な役割をはたしている。私はcdc2関連キナーゼに特異的なPSTAIR配列に対する抗体を作製し、ウェスタンブロッティング法により本来分裂能をもたないはずの中枢神経系に陽性蛋白質が存在することを発見した。さらに免疫組織学的研究を行い、抗PSTAIR抗体による染色像が主にマウス脳および脊髄のニューロンの核小体に局在することを見いだした(Ino et al., Brain Res.614, 131-136(1993))。 さらに、中枢神経系に存在するcdc2様蛋白質の構造を明らかにするために、PCR法によって得たプローブを用いてマウス脳cDNAライブラリーをスクリーニングし、2つの新しいクローンを得た。そのうちの1つは当時クローニングされたばかりのCDK5(cyclin‐dependent kinase 5)と相同なものであることがわかった。このCDK5のcDNAを用いて、ノーザンブロッティング法によりCDK5mRNAの発現は脳に最も多いことを明らかにした。さらに、in situハイブリダイゼーション法により発現の組織内局在を調べた。成熟マウスでは海馬錐体細胞,小脳プルキンエ細胞,大脳皮質ニューロンおよび末梢神経節ニューロンなどに特に発現が多く,その他のニューロンにも広く発現が認められた。しかし,グリアには発現は全く見られなかった。また,発生の比較的早い段階より神経系に比較的弱く広く発現が認められるが,個々のニューロンにmRNAの高い蓄積が認められるのは主に出生後であることがわかった。(1993.10 日本生化学会大会発表;Ino et al., submitted)。
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