(1)アデノウイルスE1AB遺伝子が導入されたマウスは5匹作成された。3匹(♂2、♀1)のファウンダー72、73、74番は、およそ4週令にて結腸下降部に腫瘍が発生した。1匹のファウンダー36番では7週令において腎臓付近および小骨盤後腹膜さらに右上唇部に腫瘍が発生した。この個体からは体外受精により子孫を作出することに成功した。また残り1匹は何ら異常が発生しなかった。 (2)病理組織学的な解析の結果、結腸下降部の腫瘍はカルチノイド、また上唇部および後腹膜の腫瘍は神経外胚葉腫瘍であることが明らかとなった。 (3)ファンダー36系統は6世代を通り、各世代で神経外胚葉腫瘍がおよそ70%の個体において発生することが確認された。またそれ以外にしばしば腸閉塞により死亡する個体も出現した。そして、この系統は神経外胚葉を自然発症するマウスとして受精卵凍結にて保存した。 ファウンダー36の神経外胚葉腫瘍は分子レベルでの腫瘍の解析のため、ヌードマウスへ移植後、培養細胞株の樹立を行い成功した。現在、この培養細胞を用い、腫瘍の特質および発生理由についてさらに詳しい解析が進行中である。
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