研究概要 |
1.臨床痛の評価に重要であると考えられている灼熱痛を弁別良く測定することは通常難しいとされてきたが、鋸歯状温度刺激により灼熱痛の弱い感覚であるとみなせる灼熱感覚の閾値測定が可能となった。この刺激による灼熱感覚閾値の測定再現性の向上を目指して輻射熱刺激装置と金属箔加熱素子を用いた接触型熱資源装置による方法を検討した。 2.鋸歯状温度刺激では、灼熱感覚を生じさせた直前の鋸歯のピーク温度を閾値として評価するため、第1鋸歯のピーク温度が閾値より十分低く、ピーク温度増分が0.5℃以下であることがもとめられる。輻射熱刺激装置のシャッター開閉制御(熱量300mcal/sec/cm^2,刺激間隔2.8sec,パルス幅0.6sec)及び接触加熱型刺激装置の熱量レベル制御(刺激期:420mw、刺激休止期:70mw)でこの条件がほぼ満足され、46〜47℃の閾値温度が測定された。しかし、皮膚温度の制御が不十分であり、刺激前皮膚温度の違いがピーク温度の増分の変動として現れてしまう。特に刺激前皮膚温度の低いときに、火傷防止のために設けた最大刺激時間(100sec)の範囲内で灼熱感覚を生じない部位がでてしまった。 3.接触加熱型の温度上昇率制御型刺激はこの問題への対処となる。刺激間隔、刺激期は上記2法と同条件とし、ピーク温度増分が常に0.5℃になるように温度上昇率を制御した。この方法では刺激前皮膚温度の違いによらず、全ての部位で灼熱感覚が生じた。また測定された閾値温度は上記2法に比べ、0.5〜1.0℃程度低く、口頭評価によれば刺激の持続による灼熱感覚の増強性も良好で、灼熱感覚もわかりやすいことが明らかになった。この温度上昇率制御型刺激法における増強性の良さや弁別性の良さが、測定された閾値温度が低いことに関係している可能性がある。さらに、この温度上昇率制御型刺激の設定パラメータを検討していけば、より弁別性の良い刺激条件が見いだされるものと考えられる。
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