本研究では、SQUID磁束計を用いて脳磁図の計測を行い、同時に計測した脳波と比較することにより、脳内電源の性質を明らかにし、得られた知見をもとに、脳機能推定に有用な脳内電源モデルを考案し、脳内電源推定のアルゴリズムを開発することが本研究の目的である。この目的の下、本研究では以下のような成果が得られた。 1.7チャネルSQUID磁束計を用いて、ヒトの睡眠時における脳磁図を脳波と同時に計測を行った。この中で睡眠時に出現するいくつかの特徴的な波形に関して電源推定を行い、睡眠2期に発生するまたK-complexの発生源が聴覚野の近傍に位置することを見い出した。 2.睡眠中に音刺激を加え、誘発脳磁図及び誘発脳波を測定し、聴性誘発反応の発生源の位置が睡眠ステージに応じてどの様に代わるか調べた。その結果、刺激後100msecの成分は、睡眠ステージがかわってもその電源の位置は10mm以内に存在していたが、200msecの発生源になると睡眠ステージに応じてばらつきがあり、20mm程度離れた位置に存在していた。 3.脳波や脳磁図を発生する電源として、これまで用いられていた1個の電流双極子ではなく、複数個の電流双極子で表現する広がりを持った脳内電源モデルを考案した。この電源モデルを用い、シミュレーションによりこれまで原因が分からなかった脳磁図の各測定点での位相差を説明することができた。
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