1.0.2mM ONOO^-添加により、培養心筋細胞の自動拍動は5分以内に停止した。一方、1mM H_2O_2では拍動の停止はみられなかった。10mM H_2O_2では添加5分以内に拍動を停止させた。 2.拍動が停止した添加5分後で、細胞内Ca^<2+>は、0.2mM ONOO^-でのみ収縮期レベルへの上昇がみられ、10mM H_2O_2では弛緩期レベルであった。ONOO^-添加による細胞内Ca^<2+>の上昇は、無Ca外液ではみられず、細胞膜の障害によると考えられた。 3.しかし、ONOO^-添加5分後では、細胞膜流動性および過酸化脂質量が変化しない。このことから、細胞膜障害は、脂質部分ではなく、膜の機能蛋白部分と考えられた。 4.また、ONOO^-による細胞内Ca^<2+>の上昇は、拘縮を生じなかった。さらに、ONOO^-添加15分後では、サポニン処理によるCa過剰流入でも拘縮を生じなかった。細胞内ATPの著しい枯渇やアシドーシスなしに、細胞内Ca^<2+>の増加に伴う収縮を示さないことは、ONOO^-添加による収縮蛋白の障害が考えられた。 5.以上より、(1)ONOO^-は、H_2O_2にくらべ高い細胞障害性を示した。(2)ONOO^-の障害性は、細胞内Ca^<2+>、細胞膜流動性および細胞内ATP量の変化へのONOO^-とH_2O_2の障害性の違いからONOO^-の直接作用と示唆された。(3)ONOO^-による細胞障害は、細胞膜脂質が関与しない細胞膜のCa透過性亢進や収縮蛋白のCa^<2+>感受性の低下がみられたことから、機能蛋白へのONOO^-の直接的障害が示唆された。 6.血管内皮細胞における、ONOO^-の生成量や低濃度での障害を今後検討する必要がある。
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