研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、移動体通信市場における価格差別を伴う企業間競争の実態のうちで、特に新規顧客に対して割引を実施するという事実に着目し、なぜそのような価格政策が選ばれるのか、さらに、このような価格戦略が企業に有利な結果(利潤)をもたらしているのかについて検討を行った。日本と同様に韓国においても、携帯電話の新規顧客割引が実施されてきたが、韓国では、2003年から新規加入する消費者に対して端末機を安く販売する「端末機補助」(paying customer to switch)を法律によって禁止(Subsidy Ban)しており、こうした規制の導入後に、各企業の経営利益が大幅に改善している。このような実態を理論的に分析することが本研究の目的である。そのため、行動ベースの価格差別(behavior-based price discrimination)やスイッチング・コストに関する最近の研究を幅広くサーベイし、携帯電話市場について、スイッチング・コストを伴う2期間の複占競争のモデルを構築し、分析を行った。そして、韓国の携帯電話市場の実態、特に政府による端末機補助の規制の経緯と規制後の影響等を検討するため、韓国のソウル市に研究出張し、韓国の携帯電話市場を調査してきた。この調査の結果は、我々のモデル分析の結果と整合することを確認した。研究成果は、2005年6月4日に京都産業大学にて行われた2005年度日本経済学会春季大会で、「スイッチング・コストと価格競争」という題名で成果を報告した。さらに、それを発展した内容を2006年1月29日に南山大学にて行われた南山マーケティング論・産業組織論ワークショップで、"Price Competition with Switching Cost"という題名で成果を報告した。さらに、現在までまとまった結果に基づいて、"Whether or Not to Price Discriminate in a Duopoly with Switching Costs"という題名で論文をまとめ、海外の専門誌に投稿した。なお、研究分担者のJeong Yuncheolは、外国人特別研究員の採用期間終了後、4月より慶應義塾大学商学部専任講師に採用が決定しており、今後も本研究を継続して行う予定である。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件) 図書 (1件)
The Proceedings of 32nd Annual Conference of the European Association for Research in Industrial Economics, 2005 (未記入)
The Proceedings of 34th European Marketing Academy Conference, 2005 (未記入)