研究概要 |
本研究では、アジュバントであり膀胱ガン治療薬として期待されているBCG菌体成分のリポソーム化を検討した。BCG菌体成分は、疎水性部分と親水性部分が複雑に組み合わされた構造をしているため、水溶性溶媒にも有機溶媒にも不溶である。従来、界面活性剤によってミセル化した製剤が用いられているが、小さい粒子としての製剤化が困難であり、治療標的部位(例えば膀胱ガン細胞)への取り込み効率は低いことが問題となっていた。この問題を解決するために、水相と脂質膜相から成るリポソーム化を試みた。さらに、細胞への取り込み効率向上のため、BCG含有リポソーム表面のオクタアルギニンR8ペプチド修飾を行った。構築されたR8/BCGリポソーム(R8/BCG-L)の免疫担当細胞(マウス骨髄由来樹状細胞)への取り込みを調べたところ、R8未修飾リポソームに比較して著しく高い取り込みを示した。BCGをFTSCで、脂質をローダミンでラベル化したR8/BCG-Lを調製し、細胞内動態を共焦点レーザー顕微鏡観察したところ、共に細胞内の取り込まれライソゾームに局在していることが明らかになった。さらに、R8/BCG-Lを取り込んだ細胞におけるアジュバントの効果(成熟化)を、樹状細胞表面のマーカータンパク質CD80,CD86,MHCIIの発現を指標に解析したところ、BCGリポソームでは弱い成熟化が認められ、またR8リポソームでは全く成熟化は誘導されなかったのに対して、R8/BCG-LはLPSに匹敵する高い成熟化誘導能を有することが明らかになった。また、Th1応答性の細胞性免疫誘導の指標であるIL12-p40の分泌をELISAにより評価したところ、R8/BCG-Lにおいて非常に高い分泌が確認された。このように本研究において、従来のミセル化BCG製剤に取って代わる新しい治療製剤としてR8/BCG-Lの開発に成功した(特許出願中)。 論文投稿中 Atthachai Homhuan, Kentaro Kogure, Hideyuki Akaza, Shiroh Futaki, Takashi Naka, Yukiko Fujita, Ikuya Yano, Hideyoshi Harashima. New packaging method of mycobacterial cell wall using octaarginine-modified liposomes : enhanced uptake by and immunostimulatory activity of dendritic cells. (submitted)
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