研究概要 |
平成18年度春の下水処理場における重金属の動態調査の結果、全亜鉛の40%が生態毒性の高い自由イオンで存在し、処理工程でほとんど除去されていないということが明らかになった。今年度は、下水処理工程における重金属動態の再現性と季節による除去特性の違いについて考察した。 平成18年度と同じ下水処理場を対象として、平成19年度夏に処理工程における重金属の除去特性と存在形態を調査した。下水処理場内の4箇所(流入水、初沈越流水、終沈越流水、砂ろ過水)に、DGT(DiflUsion Gradient in Thinfilms)を24時間浸漬し、重金属を形態別に分析した。また、流入水については日中(10時-17時)に1時間間隔で、初沈・終沈越流水については終日1時間間隔で、砂ろ過水は終日2時間間隔で採水を行った。分析対象は、Ni,Cu,Zn,Pbとした。 夏の調査では、砂ろ過水中のNi,Cu,Znの全濃度が、流入水中の全濃度の約半分に減少しており、これらの重金属類が処理工程で除去されていることが示された。また、時間変動の調査結果から、流入水における溶存態重金属の割合は、平均してNiが57%、Cuが20%、Znが15%であった。Pbは、夏の調査では検出限界以下であった。Niは溶存態、不安定形態ともに処理工程でほとんど濃度が変化しなかった。Cuは、春の調査では流入水中、処理水中ではほとんどが安定錯体として存在していたが、夏の調査では流入水中、処理水中ともに不安定形態のCuも存在していた。Znについては、春、夏ともに、不安定形態の濃度は処理工程でほとんど変化しないという共通点が見られたが、流入水中の溶存態に占める不安定形態の割合は、春よりも夏の方が低かった。これらの季節的な差異がどのような要因に由来しているのか、今後更に研究を進める必要がある。
|