研究概要 |
本研究では2週間生育させた水稲に対して9日間にわたってオゾン(0ppb、40ppb、80ppbおよび120ppb)を毎日6時間暴露し、応答するタンパク質のプロテオーム解析を行った。オゾン暴露開始から2日目に120ppbオゾン処理区の第3葉に褐色斑点が発現したが、他の処理区には可視障害の発現は観察されなかった。暴露開始から4日目に80ppbオゾン処理区の第3葉にも褐色斑点が観察された。その後、可視障害の発現は暴露日数の増加に伴って全てのオゾン処理区へ拡大すると共に、80と120ppbオゾン処理区においては上位葉(第4葉)へ可視障害の発現が進行した。しかし、40ppb処理区における可視障害の発現は第3葉のみに限定された。 清浄区(0ppb)と120ppbオゾン処理区において、無作為にサンプリングしたイネ葉身からタンパク質を抽出し、二次元電気泳動を行い、プロテインシーケンサーおよび質量分析計を用いて同定した。二次元電気泳動の画像解析により清浄区(0ppb)と120ppbオゾン処理区において、各350個のタンパク質スポットが検出され、19個のタンパク質スポットに有意な変化が認められた。光合成に関与するタンパク質の発現量はオゾン暴露により有意に減少したが、アンチオキシダント生体防衛システムに関与するタンパク質の増加傾向が認められた。Pathogenesis-related(PR)タンパク質(PR5),RSOsPR10とOsPR10a/PBZ1がオゾン暴露により誘導され,PR5は低濃度オゾン(40ppb)でも誘導されたが,OsPR10a/PBZ1とRSOsOPR10は低濃度では誘導されず,高濃度(80と120ppb)で誘導されることが明らかになった。また,抗PR5抗体および抗PR10抗体を用いたウエスタンブロットによる実験でも同じ傾向にあることを確認できた。
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