研究概要 |
分子集合体については,位置・配向ともに秩序化した完全結晶が温度上昇とともに乱れを獲得し,分子形状の異方性の大小に依存して液晶などの中間相を経て等方性液体へと融解するという基本的な描像が確立している.しかし,実際にはこのようには単純化できない種々の中間相が知られており,そこでの分子運動と相転移については不明な部分が多い.本研究では,このような中間相のうち液晶関連相であるE相に注目している.アルキル鎖長の異なる化合物群(nTCB,nはアルキル鎖長)は純物質で広い温度でE相を発現する.本研究では精密熱容量測定により相転移挙動を明らかにするとともに残余エントロピーを決定し,これまでの結果を総合してE相の動的構造を明らかにする事を目的としている.3TCBについて熱容量測定を行い,相挙動,熱力学的性質をかつてない正確さで決定した.実験結果についての基本的な解析も終了している.当研究室における5TCBについての実験をまって,その結果を比較・検討し報文としてまとめる予定である. 実験的研究とは別にPelka博士の経験を生かし,時間依存ギンツブルグーランダウ理論の枠内で単純な欠陥構造であるネマチック液晶一等方性液体間の界面の構造と移動速度について理論的検討を行った.昨年度中に投稿を行ったが,査読意見を参考に大幅な見直しを行い,新しい内容も加えて再投稿を行い,Phys.Rev.E誌に掲載が決定された.現在,印刷中である.
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