研究概要 |
近年,歪みシリコン基板はSi層の歪みによりキャリア移動度が向上するため,次世代のULSI材料として注目されている.しかし,電気的特性だけではなく,デバイス作製時に重要となる基板表面の化学的特性も変化させることが予想される.このような背景の下,申請者は最表層の歪み状態を原子レベルで知見を得,化学反応性に与える影響を定量的に解析することを目的に研究を進めている.本検討では,歪みをもつウェハの他の例としてSiウェハに機械的歪みを印加した場合の表面の歪み状態を,有限要素法による構造解析により定量的に検討した.また,電気化学測定用セルに装着したマイクロメータによりSiウェハの中心部分に機械的歪みを加えた状態で開回路電位を測定し,歪みに対する反応性の解析を行うことにより,計算と実験の両面から考察を行い,歪み度合の評価のための本手法の有用性を確認した.有限要素法の構造解析により,ウェハのモデルの中心に変位を与えた際は節点の変位から,表面は水平方向に伸張していることが示された.また,伸張率,つまり歪み度合いを算出した結果,ウェハを100μm押し上げた際は中心に約0.5%の歪みが生じることが示唆された.続いて,開回路電位の測定を行った結果,マイクロメータにより与えたウェハ中心の歪み度合いに応じて電位が変化することが示唆された.これまでの我々の検討で,ヘテロエピタキシャル成長による結晶構造に歪みを持つ歪みSiウェハにおいても,歪みの度合いに応じて開回路電位が卑にシフトしたため,機械的歪みによってもSiウェハ表面の結晶構造に変化が生じ,その化学的特性に影響を与えていることが示唆された.
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