研究概要 |
活動銀河核やX線連星のX線スペクトルとその時間変動を理論的に説明するために、ブラックホール降着流のモデルとして、光学的に厚い標準降着円盤とそれを取り巻く光学的に薄く高温のコロナからなる系を考え、その中でのコンプトン散乱を考慮に入れた光子の伝播を、3次元モンテカルロシミュレーションで追うことによって、モデルから予測されるX線スペクトルを求めた。特にコロナのモデルとしてはKato, et. al.(2003)において行われた、ブラックホール降着流の3次元磁気流体シミュレーションの結果を用いた。その結果、スペクトルの幕など広帯域で見たときのスペクトルの形状が活動銀河核のそれとよく一致することを確かめた。また、コロナ流の変動に伴うX線の時間変動についても調べた。この研究は円盤コロナ系からの放射の特徴を、磁気流体シミュレーションを用いて計算した世界で最初の例である。現在、同様の計算によってX線連星の最新の観測結果を説明する計画も進行中である。 一方、ガンマ線バーストの中心エンジンとしての大質量降着円盤についての研究も進展した。まず大質量降着流からのニュートリノスペクトルを、希薄な円盤コロナ中での輻射過程を考慮して計算しなおし、その結果からガンマ線バーストを起こすのに使える解放エネルギーが従来のモデルよりも1.5倍程度増大することを示した。現在は大質量降着円盤中の磁気流体不安定性の分析から、後期質量降着の様子について示唆を行い、ガンマ線バーストの残光の光度曲線の特徴を説明する理論モデルを構築する試みを進めている。
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