研究概要 |
神経細胞の樹状突起における小胞体ストレス応答を確認・可視化するためにマウス海馬初代培養を用い実験を行った。小胞体ストレス負荷により細胞体だけでなく樹状突起内においても小胞体ストレス応答系の下流(標的)分子[GRP78/Bip(小胞体分子シャペロン),eIF2α-P(リン酸化eIF2α)]が上昇した。更に、小胞体ストレスセンサー(ATF6,IRE1, PERK)のGFP融合発現ベクターを作製し、神経細胞に導入したところ、三つのセンサーが神経細胞の細胞体の小胞体だけではなく樹状突起内の小胞体にも局在した。次に神経細胞にIRElを導入し小胞体ストレスを負荷し抗IRE1リン酸化抗体による免疫染色を行った。その結果ストレスなしではIRE1のリン酸化は起きないのが、小胞体ストレス負荷後、リン酸化が細胞体周辺だけではなく樹状突起上でも起こることが観察された。次にIRElの下流分子であるXBP1に対するin situ hybridizationを行った。その結果神経細胞に導入したXBPlmRNAに対するシグナルは細胞体と近位の樹状突起から検出された。引き続いてXBP1 mRNAが脱分極(KC1)や小胞体ストレス時に樹状突起への移行パターンが変動しないかの検討を行った。その結果、これらの刺激でXBP1 mRNAの局在に変化はなかった。以上の結果は樹状突起内の小胞体において局所的な小胞体ストレス応答が起こりうること、つまりタンパク質の品質管理能力を保持する可能性を示唆している。次に樹状突起上のグルタミン受容体を過剰に刺激することが小胞体ストレスにつながるかをカイニン酸処理にて検証したところ、カイニン酸処理後の神経細胞においてXBP1mRNAのスプライシングは確認できなかった。このことはカイニン酸処理では小胞体ストレスを誘導しないことを示している。
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