研究課題
特別研究員奨励費
大気中二酸化炭素(CO_2)濃度上昇の作物の葉の老化促進における根の活性の役割を明らかにすることを目的とする。本年度は、高濃度CO_2に対する応答が明瞭であったイネに着目し、まず窒素吸収量と葉の老化との関係について、生育後期の供給水耕液の濃度との関係を解析した。次に、高濃度CO_2が根の窒素吸収活性に及ぼす影響を、葉からの蒸散流に依存する受動吸収と根での積極的な能動吸収に分けて葉の老化との関係を解析した。葉の老化の指標となる個葉光合成速度の葉内CO_2濃度に対する初期勾配は、生育中期までの幼穂形成期(播種後60日目)と出穂期(100日目)には生育CO_2環境による大きな違いが認められないが、登熟期(130日目)には高濃度CO_2で生育した場合(700μ mol mol^<-1>)に通常CO_2で生育した場合(350 μ mol mol^<-1>)に比べ低下した。通常CO_2濃度環境で生育したイネの出穂期以降の窒素供給量を制限すると、登熟期の初期勾配が高濃度CO_2環境で生育した場合と同程度にまで低下した。根からの全窒素吸収速度は、生育中期まで高濃度CO_2により高まつたが、登熟期には逆に低下した。受動吸収速度は、高濃度CO_2により特に登熟期に低くなった。能動吸収速度は、生育中期まで高濃度CO_2で高まり、登熟期には差がなくなった。能動吸収速度の全吸収速度に占める比率は、生育中期まで高濃度CO_2により高まったが、登熟期には差がなくなった。以上のことから、高濃度CO_2による葉の老化促進に、根の窒素の吸収能力の低下がともなうことを明らかにした。
すべて 2007
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Agriculture, Ecosystems & Environment 118
ページ: 223-230
Field Crops Research 101
ページ: 221-231