研究概要 |
ラット卵子におけるCSFの正体を明らかにするため.他の動物種においてCSFを不活性化させる機能を持つCalmodulin-dependent protein kinase II(CaMKII)のラット卵子における役割を追究した.その結果,ラット卵子の自発的活性化時にはCaMKIIの活性化が起き,またこの活性化はcyclin Bの分解を介したCDK1の低下を引き起こすことが明らかとされた.さらにラットの系統間においてCSF活性の違いがあるか否かについて検討したらところ,Wistar系ラットにおいては培養時間の経過に伴い,Mos,リン酸化MEK,リン酸化MAPKの低下が認められた.またcyclin Bの低下によるCDKI活性の低下も認められた.このとき多くの卵子が自発的に活性化した.一方,Sprague-Dawley(SD)系ラットにおいてはそれらの低下は僅かしか認められず,培養後も多くの卵子がMII期で減数分裂を停止していた.またラットにおける自発的活性化は,BAPTA-AM処理によって抑制することができたことから,ラットの系統によってCSF不活性化機構は異なり,その機構はCa^<2+>依存性であると考えられた. 受精時における卵子内Ca^<2+>イオンの上昇には,小胞体上に存在するIP_3レセプタータイプ1(IP_33R-1)を介することが知られている.そこでマウス卵子をモデルとして,卵子の減数分裂中にIP_3R-1がどのように制御されているか検討した.その結果,減数分裂の進行に伴いIP_3R-1のリン酸化が起きること,またMEK抑制剤U0126の処理により,そのリン酸化は抑制された.またこれらの卵子を顕微授精あるいは人為的刺激により活性化させたところ,Ca^<2+>オスシレーションが著しく抑制された.以上のことから卵子減数分裂中において,MAPKがIP3R-1をリン酸化することにより制御していることが初めて明らかにされた.
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