研究概要 |
化学反応系におけるパターン形成や生物の形態形成のモデルとして重要な役割を果たしている反応拡散系の一つ,ギーラー・マインハルト系について研究を行っている.ギーラー・マインハルト系は活性因子。抑制因子型と呼ばれ,二つの未知関数(活性因子と抑制因子)に関する半線形連立放物型偏微分方程式である.本研究の目的は,方程式系に現れる様々なパラメータに着目し,解の形状がそれらにどのように依存しているかを解明することである.ダイナミクスを理解する第一歩として,拡散項を除いた常微分方程式系の解の挙動を考察している.今年度は特に,活性因子の満たす方程式に現れる基礎生産項に着目し,基礎生産項が正数である場合の解の挙動について研究を進めた.これはWei-Ming Ni教授(ミネソタ大学)との共同研究である.基礎生産項が十分大きい場合には,抑制因子の反応時定数によらず平衡点は安定であり,さらに非線形項の指数がある条件を満たせば,抑制因子の反応時定数によらず,すべての解が平衡点に収束することがわかった.これは基礎生産項がない常微分方程式系の解の挙動との大きな違いの一つであり,解軌道を極限集合により分類すると,基礎生産項がある場合はない場合より単純になることがわかる. また今年度は,数値解を求めることに多くの時間を割いた.数値シミュレーションを見ることは数学的解析を行う際に予測を立てるためにも重要な役割を果たすため,拡散項のある本来のギーラー・マインハルト系について数値解を求めた.特に空間一次元の有界領域や空間二次元の長方形領域において,活性因子の基礎生産項,抑制因子の反応時定数や初期値を様々にとりながら,現れるピークの数や位置に注目して得られた結果を画像やアニメーションとして蓄積した.このとき,数値解析ソフトMapleを用いて微分方程式を解くことなど,新しい知識の吸収にも力を入れた.
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