研究概要 |
マグネシウム一価イオンとハロゲン化メチルからなるクラスターMg^+-CH_3X(X=F, Cl, Br, I)について、Mg^+の3p軌道に由来した励起状態を経由した光解離過程についての考察を行ってきた。その結果、いくつかの解離イオンの飛行時間分布において顕著な異方性が観測され、ヨウ素原子系では特に速い解離が起きていることが明らかとなった。このようなハロゲン原子による相違は、ヨウ化メチル分子ではイオン化エネルギーが小さいために、解離反応に寄与する励起状態がエネルギー的に低いためであると結論した。これらの結果をまとめて、本年度は国内外の学会で発表を行うとともに、学術論文誌(The Journal of Chemical Physics、2報)への発表を行った。 また、本研究のさらなる展開として、レーザー電場と分子の双極子モーメントとの相互作用を利用したレーザー配向実験への準備と予備実験を行った。一般に、無極性分子の配向を実現するには、レーザー場としては〜10^<12>W/cm^2程度の強度が必要となることが知られている。しかしながら、本研究で扱っているMg^+-XCH_3は電荷を持つためクラスター全体で非常に大きな双極子モーメントを持つ。そのため、上記よりも小さなレーザー強度でも配向することが可能ではないかという着想を持ち、予備実験を行った。実験手順は、Mg^+-XCH_3の生成と選別を行った後に、配向用レーザー(1064nm,2×10^8W/cm^2)を照射して、解離用レーザー(266nm)でプローブするというものである。しかしながら、クラスターイオン配向の証拠は得られなかった。この理由として、配向用レーザーの強度不足とナノ秒レーザーであるため、配向されていたとしてもプローブできていないという可能性が挙げられる。
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