研究概要 |
今年度は、LaMn_<1-x>Ga_xO_3において観測されるA型反強磁性から強磁性への転移という現象を背景に、スピンと軌道自由度の結合した系における不純物効果をWang-Landau法により解析した。その結果、不純物濃度の増大と共に磁気構造がA型反強磁性からキャント型強磁性などを経て、強磁性へと転移する事および強磁性へと転移する不純物濃度が理論模型の超交換相互作用パラメータJ_1,J_2に依存する事を明らかにした。まず不純物の無い場合の基底状態は、軌道が反強的に配列し、スピンはA型反強磁性を示す。ここに不純物を導入すると、不純物周囲の軌道が乱される。超交換相互作用からスピンと軌道は結合している為に、不純物周囲のスピン間相互作用が変化し、強磁性的相互作用を誘起する。これが磁気構造の転移の原因である。不純物周囲のスピン間相互作用はJ_1/J_2が大きい程、強磁性相互作用が誘起され易い。これは超交換相互作用のJ_1を導く交換プロセスにおいて、異なる軌道を占有する電子間のフント結合が強いほど磁気構造の転移が起こりやすくなる事を示している。これが磁気構造の転移がパラメータに強く依存する原因である。J_1を導く交換プロセスは軌道自由度が存在する事によるものである。従って、不純物の導入によるA型反強磁性から強磁性への転移という現象には軌道自由度の存在が決定的な役割を果たしていると考えられる。
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