研究概要 |
オキシトシン(OXT)は脳下垂体後葉性ペプチドホルモンであり、その受容体であるオキシトシン受容体(OXTR)は、脳を中心に発現するGタンパク質共役型受容体である。最近の研究によってOXT/OXTRは社会行動、情動行動などの脳高次機能に関わることが報告され、従来考えられていた以上に興味深い機能を持つことが明らかとなってきた。我々はOXTおよびOXTR遺伝子欠損マウス(Oxt-/-,Oxtr-/-)の作製を世界に先駆けて成功した。研究代表者らの解析からOxtr-/-は攻撃行動異常、母性行動異常、社会記憶の低下、仔マウスにおける活動量の増大、超音波発声の発声頻度の低下が観察された。この研究成果(Takayanagi, Y. Yoshida, M., et. al., PNAS. 102)はPNAS officeからPress発表され、国内外に報道された。研究代表者はOXT/OXTRと社会行動、情動行動との関連についてより詳細な解析を行うため、Oxtr遺伝子に蛍光タンパク質であるVenusのcDNAをknock-inすることにより、OXTR発現細胞でVenusを発現するOxtr-Venus knock-inマウスを作製した。このマウスを用いた解析から縫線核のセロトニンニューロンの約50%がOXTR発現細胞である事を見出した。また縫線核にOXTを局所投与するとセロトニンの放出が促進され、室傍核、分界条床核のOXTニューロンが縫線核に投射している事も明らかとなった。OXTを脳室内に投与すると不安行動が抑制され、この効果はセロトニン2A/2C受容体のアンタゴニストによってブロックされた事から、OXT-セロトニン経路の生理的な機能を明らかとした。
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