研究概要 |
Sphingomonas paucimobilis SYK-6株は、リグニンの主要な代謝中間体であるシリンガ酸を唯一の炭素源・エネルギー源として生育する。SYK-6株のシリンガ酸代謝にはプロトカテク酸4,5-ジオキシゲナーゼ遺伝子、3-O-メチルガリック酸3,4-ジオキシゲナーゼ遺伝子、およびガリック酸ジオキシゲナーゼ遺伝子(desB)を含む多様な芳香環開裂酵素系が関与する。現在までに、SYK-6株のシリンガ酸代謝系においてはdesBが主要な働きを担うこと、シリンガ酸代謝時にDesB活性が増大することが明らかにされている。本研究ではdesBの転写制御機構の解明を目的として、desBの転写活性化に関わる誘導物質の同定と転写制御遺伝子の単離を行った。desBの転写活性化に関わる誘導物質を同定するために、シリンガ酸代謝に関わる各遺伝子の遺伝子破壊株を用いてdesBプロモーター活性をβ-ガラクトシダーゼ(LacZ)活性を指標に測定した結果、シリンガ酸が誘導物質であることが示唆された。desBの転写活性化に関わる転写制御遺伝子を単離することを目的として、desBプロモーターとレポーター遺伝子であるlacZを染色体に挿入した宿主にSYK-6株の遺伝子ライブラリーを導入して、desBプロモーター活性を増大させるクローンを選抜した。得られたクローンの塩基配列を解析した結果、機能未知の遺伝子とアミノ酸レベルで相同性を示すORF(orf1)が存在することが示された。この結果からorf1がdesBの転写活性化に関与する遺伝子であると推測されたが、orf1によるdesBの転写制御機構の詳細は明らかにされなかった。今後、orf1の遺伝子破壊やゲルシフト解析を用いた遺伝子および酵素レベルでの機能解析を行うことで、desBの転写制御機構の理解がより深まると考えられる。
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