研究概要 |
2p-3dヘテロスピン系において磁気ネットワークの次元性を拡張することを目的とし、2つのピリジル基を持つ架橋型アミノキシル(N, N-bis-4-pyridyl aminoxyl; bpNO)とCo(X)_2(X=NCS,NCO,Br)の錯体を合成し、X線結晶構造解析及び磁気測定をおこなうことで以下の結果を得た。 1.4-Nitrosobenzene(1)の合成法の開発:これまで報告例の無かった化合物1の合成法の開発によりbpNO合成の簡略化に成功した。また、化合物1は有機スピン配位子の合成において鍵となる化合物であることから、今回の発見により有機スピン配位子の設計・合成の自由度が大きく拡張した。 2.Co(X)_2(X=NCS,NCO)錯体:bpNOとCo(X)_2(X=NCS,NCO)との錯体は、これまでのモノメタリック単分子磁石が二次元に連結したシート構造をしていた。磁気測定により、NCO錯体は20K以下で長距離秩序を形成し、2Kで0.48Tの保磁力を有する磁石であることがわかった。このような磁気挙動は大きな磁気異方性を有する単分子磁石を連結し、高次の磁気ネットワークを形成することで発現したと考えられる。 3.CoBr_2錯体:bpNOとCoBr_2との錯体は1:1の一次元らせん構造の鎖状錯体であった。この一次元鎖中のCo(II)は四配位正四面体構造で、モノメタリック単分子磁石の六配位八面体構造とは異なる配位形式であった。磁気測定ではフェリ鎖的な温度依存性が観測されたことから正四面体構造Co(II)-アミノキシル間には反強磁性的な相互作用が働いていると考えられる。一方、交流磁化の測定ではスピングラス様挙動が観測された。 1から3の結果は単分子磁石を構成単位とした新規分子磁性体の分子設計及び合成において有用な知見であると考えられる。
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