研究概要 |
本研究は,更新世終末から完新世前半期の日本列島における人類活動の変遷を,第四紀学的・生態学的視点から,人類と環境との相互作用系の変遷史として理解することを目的としている。具体的には,当該期の遺跡出土の種実遺体を分析し,あわせて放射性炭素年代測定を有効に活用することで,環境変化と人類活動の変化との関係を実証的に検討することである。 平成18年度は,主に平成17年度の研究成果を公表することに重点をおいた。まず,17年度に実施した,縄文時代中期から後・晩期の低地遺跡である東京都東村山市下宅部遺跡における土器付着炭化物と植物遺体の放射性炭素年代測定の成果について,日本考古学協会において口頭発表を行い,日本植生史学会においてもポスター発表をおこなった。また,下宅部遺跡における研究成果を『考古学研究』誌(2007年3月掲載)と『植生史研究』誌(掲載予定)に公表した。 新たな分析としては,後期旧石器時代の尖頭器石器群の遺跡である,新潟県の真人原遺跡C地点の発掘調査において炭化材の採取を実施し,放射性炭素年代測定試料を得た。これに加え,発掘調査がすでに終了している真人原遺跡A地点の試料を加え,これらの炭化材を2006年12月から2007年2月の間に,東京大学の放射性炭素年代測定室で化学処理を実施した。化学処理済みの試料は,2007年3月に東京大学工学部に設置されている加速器質量分析計で年代測定を実施した。研究成果について,4月以降に公表する予定である。
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