研究概要 |
【研究目的】 近年、微細加工技術を利用した細胞接着領域の制御を通じ細胞を微細領域へ配列させることが可能となり、微細加工表面上での細胞の形態・機能制御に関する研究が盛んである。本研究では機能性高分子と微細加工技術を利用し、細胞の形態、配向性、機能を制御することで、より高次な組織構造と機能をもつ肝臓あるいは心臓などの代謝系臓器構築のための基盤技術の確立を目的とした。 【研究方法】 3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランをカバーガラス表面に固定し、フォトリソグラフィー技術を用い、親水性ポリマーであるポリアクリルアミド(PAAm)と温度応答性ポリマーであるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)が交互にライン状にグラフト重合された基材を作製した。作製したパターン化表面上にヒト臍静脈血管内皮細胞(HUVEC)を37℃で培養し、HUVECを20μm幅のPIPAAmドメインのみへ接着させた。一方で、PIPAAmが全面にグラフトされている温度応答性表面上に新生児由来ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)をコンフルエント状に培養した。ゼラチンゲルスタンプを用いて、NHDF細胞層、パターン化HUVEC、NHDF細胞層の順に重層化し三次元化組織の構築を試みた。 【研究成果】 作製したマイクロパターン化表面上にHUVECを37℃で培養すると,HUVECは20μm幅のPIPAAmドメインのみへ接着した。細胞シート積層化マニピュレーターを用いて,正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)シートとパターン化血管内皮細胞を順々に積層化することで,パターン化HUVECが,NHDFシートにサンドイッチされた重層化組織を構築できた。積層化直後パターン化HUVECは積層化直前と同様に一定の間隔で配列していたが、培養を続けたところ、HUVECは網目状の構造をとり,三次元化組織中に毛細血管様ネットワーク構造を形成した。本手法は,再構成組織中への毛細血管網構築法のひとつとして今後の応用が期待される。
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