研究概要 |
これまで都市大気乱流特性における建物凹凸の影響を把握のため,屋外都市模型実験での乱流計測を行ってきたが,本年度はこれまでに蓄積された乱流計測データの解析を主に行った.その主な成果として,接地境界層内の乱流変動に含まれる,地表面摩擦や建物の形状抵抗によって生み出された乱流変動成分と,その外層で発達する大気乱流混合に起因した低周波変動成分を生波形から分離することを試みた.そして両者の変動成分の持つ空間構造特性について検討を行った. その結果,外層起因の低周波変動がもたらすu(主流風速成分)スペクトルの乱流エネルギーが大きく減少したが,一方でw(鉛直風速成分)やuwスペクトルに関してはほとんど変化が無かった.つまり,外層起因の低周波変動は正味の運動量輸送をもたらさないinactiveな変動であることが分かった.また,外層変動成分を除去した後の変動成分については内部スケーリングによる相似性(例えばモニン・オブコフ相似則)が成立することが分かった.また乱流変動の水平分布形状について見てみると,低周波成分を除去した後の乱流変動に関して,低速領域が流れ方向に沿って細長く存在していることが分かった.その大きさは幅10m程度,流れ方向100m以上であることは前年度の研究でも確認されているが,外層起因の低周波変動成分除去した後も尚,残る構造であることから,これは外層変動に起因しない底面で作られた乱流構造であることが推測される.つまり本研究では都市大気境界層の乱流特性に関して,地表面凹凸や外層の低周波変動によらず,時間平均構造,空間構造共に普遍的であることを示唆している.
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