研究課題
特別研究員奨励費
同一河川に生息する在来サケ科魚類と外来サケ科魚類の流程分布の違いに関して、水温条件特異型競争の影響が示唆されている。ただし、先行研究の場合、外来種の侵入履歴(侵入開始場所・時点)が不明であるため、現況の流程分布は、水温条件特異型競争の結果を反映しているのか、その場所でのみ外来種が放流された結果なのかは分からない。そんな折、侵入履歴が明確で、在来種アメマス単独域へ外来種ブラウントラウト(以下ブラウンと略記)が侵入している場所を発見した。千歳川支流紋別川には、本流に堰堤があり、その下流部はアメマスとブラウンの混成域、上流部はアメマス単独域であったが、2004年冬に堰堤が決壊し、今年になって上流部にもブラウンの侵入が確認された。そこで、本研究では紋別川でアメマスとブラウンの流程分布と水温条件特異型競争の関係を考察した。調査は、2006年6月から8月に行った。紋別川全域に1km間隔で長さ200mの調査区を設定し、スリーパス除去法によるアメマスとブラウンの密度推定とデータロガーを用いた水温の記録を行った。また、流程と相関するであろう河床勾配も測定した。その結果、ブラウンの割合は、上流域になるほど小さくなった(侵入が起きていない)。流程と水温(調査期間中の平均9.5〜13.5度)は負の相関、河床勾配(0.3〜2.8%)は正の相関を示したが、ブラウンの割合と有意な相関関係にあったのは水温だけだった(負の相関)。堰堤から最上流域まで約5kmであることから、時間的には最上流域までブラウンが侵入するには充分である。したがって、ブラウンが上流域に侵入できないのは、アメマスの存在が影響していると考えられる。そして、その影響として水温条件特異型競争によるアメマスのブラウンの排除である可能性が高い。逆に、水温が高い下流域でブラウンが多いのは、ブラウンによるアメマスの排除が影響していると考えられる。
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