クマムシの一種、ツメボソヤマクマムシRamazzottius cf. varieornatusは、周囲の水がなくなると完全に脱水して半永久的な乾燥休眠状態、クリプトビオシスに陥る。クリプトビオシス状態にあるクマムシは、様々な種類の極限環境に対する耐性を持つことが知られている。本研究では、活動状態およびクリプトビオシス(乾燥休眠状態)に陥ったR. cf. varieornatusに対してさまざまな線量のHeイオンビームを照射し、生存判定を行い耐性能力を検証するとともに、照射後の繁殖能力の有無を検証した。結果、両状態の個体ともに、線量依存的に生存率および、生存可能日数が減少する傾向が見られた。クリプトビオシス状態の個体においては、1000Gyに暴露された後であっても、産卵し、その卵はふ化することが確認された。一方で、活動状態個体では、1000Gy以上の照射により、完全に不妊化することが分かった。今後は、照射個体の損傷を、DNAレベルで検出するため、コメットアッセイを用いた評価が必要であることが示唆された。
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