研究概要 |
本年度は、2006年3月に『オリエント』に投稿した「13世紀後半におけるジョチ・ウルスとマムルーク朝の外交関係」と題する論文の査読結果を受け、本論文の改訂作業を行った。本論文を、2007年8月に再び『オリエント』に投稿する予定である。 本論文は、13世紀後半の東地中海地域における多国間外交を扱ったものであり、その外交において、東地中海地域における貿易活動は大きな影響を与えている。そのため本年度は、この東地中海地域における奴隷を中心とする貿易において、中心的な役割を担ったとされているジェノヴァ商人に関する先行研究の整理を行った。 また、マムルーク朝で執筆されたアラビア語史料の記述と、ビザンツ帝国で執筆されたギリシャ語史料の記述から、ジョチ・ウルスとマムルーク朝とビザンツ帝国の外交使節が、それぞれの国家の友好関係を築くという外交的任務と、活発な貿易活動を導くという商業的任務を兼ね備えていたという結論を導き出した。これらの外交使節の具体的な役割に関しては、今後も検討していきたいと考えている。 これらの研究を踏まえて、今後はジョチ・ウルスにおける黒海北岸地域の意義を考察する予定である。 また、本年度5月には、昨年度に投稿した以下の書評と紀行が刊行された。 ・書評「赤坂恒明『ジュチ裔諸政権史の研究』」『オリエント』48-2,2005,186-193. ・紀行「ジョチ・ウルスの外交関係にかかわる地域を訪ねて-黒海周辺5ヶ国紀行-」『内陸アジア史研究』21,2006,97-106.
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