研究概要 |
本研究では,剛直なポリイン型環状化合物によるカラムナー液晶相の発現を目指し様々な環状分子を合成しその性質を明らかにする.また,配列させた環状ポリイン型化合物の液晶相における架け橋重合によるナノチューブ状構造体の合成,および金属ナノワイヤー構築の可能性を探索することを目的としている. 超分子液晶系を構築する前段階として,より基礎的かつ詳細な知見を得るために,アセチレンもしくはジエンユニットを有する様々な環状パイ電子系化合物の集合挙動について精査した,まず、これら化合物の固液界面における白己集合挙動を調査し,生成する単層膜の制御を目指し,トンネル顕微鏡による観察を行った.単層膜を鋳型としたピタキシャル成長により,従来にはない高度に制御された超分子構造体が得られる可能性がある. まず,周囲をアルキル鎖で置換したデヒドロベンゾ[12]アヌレン([12]DBA)誘導体に着目した.三角形の共役系を持つ[12]DBAはハニカム型を示し,菱形の共役系を有するbis[12]DBAはカゴメ構造をグラファイト上で形成することが明らかとなった(論文1).この特徴的な二つの構造は,パイ共役系の形状とアルキル鎖間の強固な分子間力に起因している. 次に,パイ電子共役系が拡張したデヒドロベンゾ[18]アヌレン([18]DBA)誘導体の固液界面における単層膜の形成について調査した.用いた[18]DBAは三角形のパイ共役系と[12]DBAと同じ長さのアルキル基を有する.しかしながら,興味深いことに[12]DBAとは異なる直線型もしくはクアドラティックな二次元結晶構造を示した. 以上のようにパイ電子共役系の構造が固液界面における分子配列に大きな影響を与えることを明らかにした.今後より詳細な分子設計による,単層膜の構造制御,単層膜を鋳型としたエピタキシャル成長による超分子構造体の形成の可能性について検討する.
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