研究概要 |
スキホスタチンは、中性スフィンゴミエリナーゼ(N-SMase)阻害活性を有する天然物であり、N-SMase阻害剤は、アルツハイマーやAIDS等の新しい作用機序を持つ治療薬とし注目されている。スキホスタチンは、既存のN-SMase活性を持つ化合物の中で最も高い活性を持つが、その不安定性が問題となっている。また、私は、光学活性C_2対称ヒドロベンゾイン由来のジエンアセタール類に対する分子内ハロエーテル化反応や官能基選択的アセタールの脱保護法等を鍵反応とし、スキホスタチンの不斉全合成を達成している(総17工程)。そこで、本合成ルートの基づき様々な安定な誘導体を合成し、SIP阻害や抗癌活性における構造活性相関研究を行い、興味深い知見を得た。 また、この全合成の鍵反応として開発したアセタール-TESOTf-2,4,6-collidineにより形成される新規カチオン中間体(ピリジニウム型塩)を用いた新規反応の開発を行った。この中間体に対し、様々な求核種(酸素原子、炭素原子、硫黄原子、窒素原子等)の導入を行い、本中間体の有用性を示した。また、本反応は水酸基の保護基として用いられるTHF,THP環等のアセタール構造を有する化合物に対しても応用可能であり、THF,THPエーテルの新規脱保護、求核種導入法として確立した。これら全ての反応は塩基性条件で進行し、従来法の酸条件では適応困難な、酸に不安定な官能基を有する化合物にも適応可能な有用な手法である。更に、アセタールの変わりにアルデヒドを用いた新規官能基選択的求核種導入法の開発を行った。 また、ホスフィン原子を含むカチオン中間体に対する反応性の検討も行い、新規反応を開発した。
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