研究課題
特別研究員奨励費
我々は昨年度、微小地震と大地震の動力学的破壊過程の相違点および類似点を調べるため、南アフリカ金鉱山内で観測された微小地震について静的応力降下量および規格化エネルギー(地震波放射エネルギーと地震モーメントの比)の解析を行った。その結果、微小地震の静的応力降下量および規格化エネルギーはともに、大地震のそれらの値とほぼ同じであることが示された。この結果は2007年3月に国際雑誌に掲載された(Yamada et al., 2007)。本年度はこの解析結果をふまえ、地震の最終的規模が地震破壊開始後どの段階で決まっているのかを明らかにする新たな研究段階に進んだ。この研究は、地震破損停止機構の解明のみならず、近年急速に研究が進んでいる緊急地震速報の高度化のためにも重要な研究である。日本のJRなどで使われているUrEDASシステム(Nakamura, 1988)や、アメリカカリフォルニア州の緊急地震速報ElarmS(Allen and Kanamori, 2003)では、地震波の最初の数秒間のデータのみから計算される卓越周波数と地震の最終規模との線形関係を用いて、地震の最終規模を即座に推定している。しかしながら、この線形関係は経験則から導かれており、物理的背景は必ずしも明らかになっていない。我々は、数値実験および南アフリカ金鉱山内でめ実際の観測波形の解析を通して、この線形関係の物理的背景の解明に取り組んだ。その結果、このシステムの基礎となっている「卓越周波数と地震の最終規模との線形関係」そのものは、必ずしも震源の物理過程を反映したものではなく、この線形関係を用いて震源物理の議論をすることはできないということを明らかにした。したがって、この線形関係を根拠に、地震の最終的規模が地震破壊開始後数秒の間に決まっていると結論付けることはできない。我々はこの研究成果を、2008年2月に国際雑誌に投稿した(Yamada and Ide, 2008)。
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Journal of Geophysical Research 112(B3)