研究概要 |
TCP/IPとEthernetを用いたSAN(Storage Area Network)として,iSCSIを用いたIP-SANが期待されている.iSCSIを用いたIP-SANは,IP管理技術者の数が多い,導入コストが低い,接続距離の制限がないなどの利点が期待されているが,プロトコルスタックが複雑で性能向上を実現しづらいという欠点も指摘されている. そこで,本研究ではIP-SANの全プロトコルスタックの振る舞いの解析が可能である解析システムを構築し,性能のボトルネックの箇所の発見と性能の向上を目指した.実装した解析システムは,IP-SANの全層の振る舞いを観察可能であり,イニシエータにおけるI/O要求の発行から,ターゲットにおけるストレージデバイスのアクセスまでを追跡することができる.すなわち,イニシエータにおいて,システムコールが発行され,その要求がファイルシステム層,SCSI層,iSCSI層,TCP/IP層,Ethernet層を通過し,ネットワークを超えてターゲット機に到達し,Ethernet層,TCP/IP層,iSCSI層,SCSI層を通過しターゲット機のストレージデバイスにアクセスするまでの様子を観察することが可能となった.このような全層トレースシステムの構築により,複数の層の中で性能を制限しているのがどの層であるかを明確に示すことが可能となった. 提案システムを実際に高遅延環境におけるシーケンシャルアクセスやショートブロックアクセスに適用したところ,ボトルネック箇所が発見され,それぞれ60倍以上の性能向上,30倍以上の性能向上が実現され,提案システムの有効性が確認された.
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