配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2007年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2006年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2005年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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研究概要 |
半導体超格子におけるテラヘルツ利得の物理的理解とそれに基づいた制御を行うため,フェムト秒レーザーを用いてノンドープGaAs系超格子試料から放射されたテラヘルツ電磁波を時間領域計測し,利得に重要なプロッホ振動の初期位相を継た。直流電場下で励起波長を系統的に変化させた測定から,プロッホ振動によるテラヘルツ放射は波形を強固に保つことが分かった。さらに,この波形に最大エントロピー法を適用して時間原点を精確に決定し,cos型減衰振動の電流を仮定したシミュレーションと比較すると,極めて良い一致が得られた。これらの結果から,プロッホ振動による電流が,光パルス励起の瞬間に最大値から始まる特異な位相で超格子中を流れていることが初めて明らかになった。この電流は,ミニバンド分散関係に基づく半古典的プロッホ振動モデルから予想されるものとは全く異なっている。超格子中のミニバンドは直流電場下でシュタルク梯子に分裂するが,構造の並進対称性から,全てのシュタルク準位は等価であるため常に同数の電子を持たなければならない。得られたcos型減衰振動の電流は,この境界条件によって位相を一意に制限された分極電流と解釈することができ,利得の存在に本質的であることが分かった。一般に,半導体テラヘルツ放射デバイスにおいて,電流はゼロから始まると仮定されることが多い。しかし,上記の結果は,電場印加による波動関数の局在のために電流が有限の値から始まりうるという重要な知見を与えている。本成果については,第15回半導体における非平衡キャリアダイナミクスに関する国際会議(HCIS-15),及び,第63回日本物理学会年次大会で口頭発表し,論文を執筆中である。
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