研究概要 |
平成18年度の研究は長期研究の中での文献調査、及び2008年度12月に東京大学大学院に提出予定の学位論文『午後の絵画:初期未来主義と形而上絵画における時間と距離の表象(1909年-1918年)』の執筆、及び2008年2月にボローニャ大学美術史専門課程において受理見込みの学位論文『デキリコとポストモデルニタ:「想像の美術館」の時代のユリシーズの像』の執筆に費やされた。この成果の一部は、今年度中に申請しかつ受諾を得た、2008年の国際美術史学会メルボルン大会における口頭発表において提示される予定である。 *「帰還の表象における芸術的移動の多様性:オデュッセイア、エブドメロス、ジョルジョ・デキリコのポストモダーン性(Molteplicita del migrare artistico nella rappresentazione del ritorno : Odissea, Hebdomeros e la postmodernita di Giorgio de Chirico)」、第32回国際美術史学会メルボルン大会、口頭発表、オーストラリア・メルボルン大学、2008年1月(査読有)。 イタリア20世紀美術、とりわけ形而上絵画を対象としたモノグラフィー研究に発した本研究は、上記の二学位論文のテーゼに取り組むなかで、作品の描かれた時代の芸術作品とイメージの状況(特に複製技術の進展による、視覚や受容の様態の変容)のなかで作品と図像、特に反復の技法等を分析する必要性を認織し、一方では芸術作品とイメージをめぐる諸制度・空間をめぐる言説の再検討を通して萌芽を見た新しい諸研究問題が、今年度の研究のもう一つの成果であり、今後の研究において歴史的・理論的射程を拡大するなかで、探究を継続するものである。
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