研究概要 |
近年発熱量の増加する電子デバイスの冷却機器開発を背景として,昨年度までにマイクロチャネル内気泡微細化強制流動沸騰の熱伝達特性に関する研究を行った.気泡微細化沸騰の高い除熱性能によって5MW/m2程度の熱流束を奪いつつ,気泡が微細化することによってチャネルの閉塞を避けて圧力損失の増加を防ぐことができた.しかし,通常の沸騰面では隣接気泡同士の干渉や複雑な流れ場の影響があるため,気泡が微細化されるメカニズムや詳細な発生条件を明らかにすることはできなかった. そこで今年度は,人工伝熱面上に単一の蒸気泡を生成し,その成長・収縮・崩壊の計測を行った.人工伝熱面にはMEMS技術を用いて微小熱電対,電解トリガー,および薄膜ヒータが形成されており,薄膜ヒータを用いた非定常加熱によって制御された過熱液層を生成し,電解トリガーによって任意のタイミングで微少量の水素気泡を生成する.水素気泡を気泡核として成長する気泡の挙動を観察するとともに,気泡底部の温度分布を熱電対によって計測した.予備的な実験により,低サブクール,低熱流束条件における過熱液層生成とミクロ液膜蒸発の温度変化を捉えることができた.また,高速カメラによって撮影された気泡画像を解析し,低サブクール沸騰特有の動径方向の気泡振動を確認した. 今後は熱流束,サブクール度の範囲を広げて系統的な実験を行い,気泡の崩壊と微細気泡の射出が起こる条件を明らかにしていく予定である.
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