研究概要 |
本研究において新しいパイロクロア酸化物超伝導体KOs_2O_6,RbOs_2,O_6,CsOs_2O_6を発見した。超伝導転移温度(T_c)はそれぞれ9.6K,6.3K,3.3Kである。これらの構造はβ型パイクロア構造である。空間群はFd3m(No.227)であり、格子定数はKOs_2O_6が10.0911(2)Å、RbOs_2O_6が10.11760(4)Å、CsOs_2O_6が10.15250(4)Åである。これらの物質の特徴はオスミウムの形式価数が5.5+であり5d電子を2.5個持つことである。そのためこれらの物質が、金属絶縁体転移を示すCd_2Os_2O_7(O_s^<5+>,5d^3)と超伝導特性を示すCd_2Re_2O_7(Re^<5+>,5d^2)の間に位置しているとみなせ非常に興味深い。またもう一つの特徴は、アルカリ金属イオンがパイロクロア格子からなるカゴ状構造の中でラットリングをしていることである。 電気抵抗率測定、比熱測定、磁化率測定の結果から、これらが単純なBCS超伝導体でないと考えられる。NMR測定やμSR測定の結果からは、特にKOs_2O_6が異方的超伝導パラメータを持つことが示唆されている。また、現在、KOs_2O_6のみは単結晶が得られており、この単結晶の比熱測定、電気抵抗率測定および磁化率測定において、T_cより低い温度T_p=7.5Kにおいて未知の1次転移を観測した。この転移は恐らくカリウムイオンのラットリングと関係があると考えられ、超伝導とラットリングの関係にも興味がもたれている。
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