研究概要 |
申請者は、キラルスペーサーを介した水素結合の協調効果を基軸とする新たなタイプの有機触媒の創製研究に取り組み、温和な条件下これを用いる原子効率型炭素-炭素結合反応を実践することで、その触媒設計理論の一般性を示した。 第一に、含窒素型キラルビルディングブロックを効率的に供給するために、ニトロ基とカルボニル基認識部位を有するグアニジン/チオウレア触媒を創製し、アルデヒドとニトロメタンを基質とするエナンチオ選択的ヘンリー反応を開発した。各種スペクトル解析と触媒構造活性相関研究により、本触媒の触媒活性にはグアニジン官能基とチオウレア官能基の両方が必須であることを明らかにし、アルデヒドの置換基がニトロ基に対しアンチの配座となる反応遷移状態も提案した。次いで、更に高度官能基化されたキラルビルディングブロックの供給法を確立するために、提唱した遷移状態を反応のデザインにフィードバックすることで、基質適用範囲の拡張を行った。その結果、キラルアルデヒドを求電子剤として用いるジアステレオ選択的ヘンリー反応及び、プロキラルなニトロアルカンを求核剤として用いるエナンチオ-ジアステレオ選択的ヘンリー反応を開発することができた。これらは有機触媒を用いる初めての不斉ヘンリー反応の開発例である。 更に開発したエナンチオ-ジアステレオ選択的ヘンリー反応を鍵反応とし、type-2サイトカイン選択的産生抑制剤(4S,5R)-サイトキサゾンの効率的な合成法を確立し、開発した反応の有用性を示すこともできた。
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