研究課題
特別研究員奨励費
ウイルス感染時の免疫系細胞の活性化におけるIFN-IRF系の関与について、特に免疫系賦活において最も強力と考えられるToll様受容体(TLR)下流のMyD88依存的経路におけるIRFファミリー転写因子の役割について検討した。9つあるIRFsとMyD88との相互作用を蛍光エネルギー移動(FRET)を計測することにより網羅的に検討した。その結果、IRF-5やIRF-7に加え、IRF-4もMyD88と直接相互作用することが見出された。更にIRF-4はIRF-5と競合的にMyD88と結合することで、IRF-5による炎症性サイトカインの誘導を阻害することが見出された。実際IRF-4欠損マウスでは炎症性サイトカインの産生充進が見られ、正常マウスに比べTLR刺激によるショック死に感受性であった。IRF-4はTLR刺激によって発現誘導されることから、TLRシグナルにおける負の制御因子であると考えられた。このようにIRF-4が感染免疫増強における新たな標的となり得ることを示唆する所見が得られた。加えて、本研究によりIRF-1もTLR下流シグナル経路に関与することが分かった。IRF-1も同経路に関与することが既に分かっているIRFファイミリー転写因子同様にMyD88と直接相互作用することが活性化に重要であり、MyD88依存的な経路の下流でIL12p35、iNosの誘導に必須の役割を担う事が分かった。一方、IRF1はp53と共役し細胞周期を制御することが知られており、また、IRF-5はp53の標的因子であることも知られている。このような知見からp53はTLRシグナル経路において何らかの役割を担うことが示唆されるが、今後さらに検討を進めることで詳細が解明されると思われる。
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