研究課題
特別研究員奨励費
神経系形成過程ではグリア細胞が重要な働きを持つことが知られている。しかしながらその挙動を制御する分子機構はほとんど分かっていない。本研究ではショウジョウバエ視覚系の形成過程において成虫視神経軸索の投射経路として働く眼柄構造をモデルとしてこのような機構の解明を目指した。まず眼柄はグリア細胞(SG細胞)が整然と配列した単細胞層の円筒状構造でありその形成は視神経軸索を必要としない1ことを明らかにした。引き続いてスクーリーニングを行い、眼柄形成に関与する遺伝子としてFak56DとCdGAPrを同定した。Fak56Dのほ乳類ホモログFocal adhesion kinaseはフォーカルコンタクト(FCs)を介した分子機構において重要な働きをもつことが知られる。Fak56D変異体においては眼柄形態の異常が見られ、外来月Fak56DをSG細胞特異的に強制発現することにより異常が回復することから、Fak56DはSG細胞において働きSG細胞が円筒構造を維持する過程を制御していることがわかった。さらにクローン標識実験を行い、Fak56D変異体においてSG細胞の分布様式に異常が見られることを示した。またFCsの主要構成因子であるintegrin b subunitをコードするmyospheroidとFak56Dが遺伝学的に相互作用することを示した。CdGAPrはマウスCdGAPと相同性の高いGAPドメインをコードしている。マウスCdGAPはintegrinシグナリング経路で働き細胞骨格制御に働くという報告があるが、CdGAPr機能欠失体においてFak56Dと同様の眼柄形成異常が観察され、Fak56DとCdGAPrとの間に遺伝学的な相互作用が確認された。本研究により、FCsを介した分子機構によりグリア細胞が細胞自律的に円筒構造を形成する様子が明らかとなった。以上の結果はDevelopment誌(The company of biologists Ltd)に掲載された。
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