研究概要 |
Pd(111)単結晶基板上のCo薄膜の上へ成長させたFe薄膜について、その磁気異方性を調べた。昨年度までで明らかにしたFe/Ni/Cu(001)におけるFeと同様に、1ML以下のFeは、Co/Pd(111)上でも大きな面直磁気異方性を示すことがわかった。すなわち、環境によらずFe自身の性質に由来する磁気異方性であることが強く示唆された。 典型的な磁性薄膜であるFe/Cu(001)薄膜の磁気異方性について詳細に検討した。磁気異方性を理解する際に、磁気異方性エネルギーを表面、内部、界面、と分けて議論するが、これらはきちんと求められていなかった。試料作製の工夫等により、これらを全て求めることに成功した。その結果、Fe/Cu(001)薄膜の磁性、特に面直磁化の起源について、最表面層の大きな面直磁気異方性が膜全体の面直磁化を安定化していることを明らかにした。 磁性元素が引き起こすSRTとの比較で、原子・分子が引き起こすものとしてCO/Fe/Cu(001)系の研究を引き続き行った。Fe(2,4ML)/Cu(001)にCOを吸着させると、CO/Fe(2ML)/Cu(001)は面直磁化で2.3μ_Bと特に変化はなかったが、CO/Fe(4ML)/Cu(001)は面内磁化へ転移し、1.1μ_Bと半減した。深さ分解XMCD法による詳細な解析から、4ML薄膜では表面から2層の磁化が消失していることがわかった。面内磁化へとスピン再配列転移したことは、Fe/Cu(001)の研究で明らかになった、Fe表面層が持つ面直磁気異方性が、CO吸着による磁化消失と共に失われたためと考えられる。また、XPSなどによる実験から、これらCO/Fe(2ML)/Cu(001)とCO/Fe(4ML)/Cu(001)では表面構造に違いがあることが示唆される結果が得られた。
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