研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、電気生理学的手法と磁気共鳴画像法(MRI)の併用により個々の神経細胞の活動記録部位を正確に同定することで、視覚連合記憶に関わる神経細胞の性質と大脳皮質層構造の関係を解明することを目的としている。昨年度までにおいては単一神経細胞活動の記録部位を高磁場4.7テスラMRIにより150μmの高解像度で同定する手法を開発した。しかしながら、視覚連合記憶にとって重要な下部側頭葉傍嗅皮質においては第4層が薄く大脳皮質層構造のMRI画像化が困難であるため、層構造の同定には組織切片を併用するなどの改良を行わなければならない。そこで本年度においては、MRI画像と組織切片との対応づけを正確に行うため、両者で確認できるような標識を脳内につけ、これを基準として位置合わせを行う手法を開発した。脳内に挿入したエルジロイ電極を電気分解して金属成分を組織に沈着させ、MRI画像と組織切片の双方で可視化可能な標識を生成した。MRI撮像と組織切片の作成を繰り返しながら電気分解パラメータを検討した結果、直径150-200μm程度の小さな金属沈着標識を安定して生成することができるようになった。この標識は少なくとも7ケ月以上残存し、サルを用いた慢性実験に適用可能であることが示された。上記手法の要点を2007年に東京で行われた東京大学生命科学研究ネットーワークシンポジウム、米国アシロマにて行われたカルフォルニア大学サンフランシスコ校神経科学リトリート、および2008年に富浦で行われたグローバルCOE「生体シグナルを基盤とする統合生命学」第1回リトリートで報告した。また上記の手法開発の実験と並行して、1頭目のサルの訓練を終了させた。対連合記憶課題を用い、12ペア24種類の図形を学習させ、その後に頭部に固定具を取り付ける手術を行い、頭部を固定した姿勢で課題を遂行させる訓練を行った。
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