研究概要 |
本研究は糖鎖構造変化に着目した新規血中腫瘍マーカータンパク質の発見を目的として、平成17年度より当奨励費の助成を得て開始されたものである。 本年度は、独自に開発したレクチン結合プロテインチップシステムとSELDI-TOF MS(Surfce enhanced laser desorption/ionization-time of fight mass spectrometry,BioRad社)を用いて、肺癌愚者血清中に存在する糖タンパク質の異常糖鎖を網羅的、ハイスループットに同定する手法を構築した。 カルボニルジイミダゾール基でコーティングされたプロテインチップ上に種々のレクチン分子を固相化し、このレクチン結合プロテインチップに糖鎖構造特異的に補足された血清糖タンパク質をSELDI-TOF質量分析計にて測定を行った。Multiple Affity Removal System(Agilent社)により多量タンパク質14種を除去した健常者血清10例、肺腺癌患者血清10例を用いたスクリーニングにより、肺癌患者血清中において高頻度にNeu5Ac(α2,6)GalNAc構造が欠失していると推定されるタンパク質、apolipoprotein C-IIIが同定された。さらに90例の血清サンプルを用いた検証実験により、この糖鎖構造変化の頻度が肺癌の病期依存的に亢進することが明らかとなった。 以上より、Apolipoprotein C-III上の特定のシアル酸欠失が新たな肺癌診断マーカーとなる可能性が示唆されたので、簡便に糖鎖構造変化を検出できる診断キットの開発や、より大規模な検証実験を行うことによって、腫瘍マーカーとしての特異性、実用性を検討していく。
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