研究概要 |
(1)アラビノガラクタン蛋白質(AGP)がどこまでジベレリン(GA)作用に特異的に関与しているかを、大麦糊粉層フロトプラストを用いてのマイクロアレイ解析により碓認した結果、GA誘導姓遺仏子の80%の発現誘導がAGPの阻害剤であるヤリブ試薬処理により抑制され、さらにヤリブ試薬処理が防御応答関連遺伝子の発現を誘導していることが明らかとなった。次に防御応答誘因物質が糊粉層におけるGA情報伝達に与える影響を検討した結果、実際に防御応答情報伝達がGA情報伝達を阻害することを加水分解酵素の活性、遺伝子発現の両方で示した。さらにヤリブ試薬はGA情報伝達の抑制因子であるNAK型キナーゼやWRKY転写因子の発現量を増加させ、これらの因子が防御応答情報伝達とGA情報伝達の相互作用に関与することを明りかにした。本研究により、GA情報伝達が防御応答情報伝達により抑制されること、さらにAGPが防御応答に関与する可能性が考えられるという2点が示された。 (2)イネ糊粉層特異的な新規なタイプのAGPとして同定したENOD型AGP,OsENODL1とその相同性遺伝子OsENODL2のRNAiや過剰発現ベクターを導入したイネを作成した結果、OsENODL1とOsENODL2を共にRNAiにより発現抑制した場合に、不稔となり種子の形成が認められなかった。このことから、これ2つのENODL型AGPが機能の重複を有し、穀類種子形成過程に重要であることが明らかとなった。 (3)酵母2ハイブリッド法でOsENODL1の有するplastocyanin-likeドメインと相互作用の能性のある分泌蛋白質をスクリーニングし、その候補として防御応答に閥与するxylanase inhibitorを得た。 (4)シロイヌナズナにおけるENOD型AGPファミリーを明らかにし、それぞれのT-DNA挿入遺伝子破壊株を調査した。各々の一重遺伝子破壞株では形質の変化は認められなかった。しかし、二重遺伝子破壊殊の作成暗には、二重返伝子破壊株ホモラインの取得が困難なものが存在した。このラインについて追究した結果、受精時に異常が存在することが示唆され、遺伝子の発現部位を考慮すると、これらのENOD型AGP力葉精時の花粉において機能を有することが強く考えられた。
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