研究課題
特別研究員奨励費
今年度は、前年度に引き続いてHIV膜融合を標的とした阻害剤の創製研究に取り組んだ。具体的には、T-20耐性獲得ウイルスに対し、我々がこれまでに創製した阻害剤の抗HIV活性について精査した。阻害剤としてはペプチド性膜融合阻害剤SC34EKを基盤分子とし、抗HIV活性を測定したところ、T-20耐性株に対しても強力な活性を示すことが明らかとなった。この現象を物理化学的な視点から考察すべく、circular dichroism (CD)測定により熱安定性、結合親和性を評価したところ、SC34EKは耐性獲得ウイルスに対しても強く相互作用するという知見が得られ、SC34EK はT-20に続く第二世代膜融合阻害剤となりうるのではないかと予想される。また、上記のような膜融合阻害剤の活性評価は一般に感染性を有するウイルスと宿主培養細胞を用いるため、高い封じ込めレベルの実験施設が必要であること、実験者への感染リスクが伴うといった問題が生ずる。これら問題点を解消すべく、安全かつ簡便な新規スクリーニング法をELISAを基盤として構築した。その原理は膜融合におけるHIVgp41の構造変化をin vitroで模倣したものであり、具体的には、gp41の構造変化の際に重要となるgp41中のHR1およびHR2と一般に呼ばれる領域を大腸菌により融合タンパクとして別々に作成し、HR1-HR2相互作用をALP反応基質の発色により検出する。阻害剤は両者の相互作用をブロックするため、発色を示さず、その阻害活性を吸光度により定量することが出来る。事実、ウイルス/細胞を用いた方法と同様、このELISAによっても融合阻害ペプチドの効果を測定することが可能であった。このことから、本方法はHIV膜融合阻害剤の一次スクリーニングシステムとして有用であることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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