研究課題/領域番号 |
05NP0601
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研究種目 |
創成的基礎研究費
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岩崎 洋一 筑波大学, 物理学系, 教授 (50027348)
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研究分担者 |
渡瀬 芳行 高エネルギー物理学研究所, データ処理センター, 教授 (70018662)
中田 育男 筑波大学, 電子・情報工学系, 教授 (70133022)
宇川 彰 筑波大学, 物理学系, 教授 (10143538)
星野 力 筑波大学, 構造工学系, 教授 (30027130)
中澤 喜三郎 筑波大学, 電子・情報工学系, 教授 (90217696)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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キーワード | 並列計算機 / 場の物理 / 疑似ベクトル機能 / RISC / ハイパークロスバ- / 並列アルゴリズム / 格子QCD / Tera Flops |
研究概要 |
平成5年度の成果は、専用並列計算機開発・製作作業が中心である。 ハードウェア面では、平成4年度に作成した基本設計を基に、専用並列計算機の詳細 設計を行った。この作業の第一段階として、並列計算機を構成するノードプロセッサ ・結合ネットワーク・システム制御・入出力制御の各部の論理設計を行った。各部の 構成素子(演算素子、記憶素子等)の性能、構成方式等の技術的詳細の選択決定にあ たっては、それらに基づく並列計算機が「場の物理」の研究に必要な計算性能を満た すかどうかを、シミュレータによる疑似実行を含む詳細な検討を行い、必要な場合は 設計の変更を加えつつ最終案を作成した。第二段階として、これらの詳細設計の機能 動作確認、特にノード間通信性能の確認用に、16台構成のプロトタイプの部分試作 を行った。 ソフトウェア面では、並列処理システム用システムプログラムの基本設計を開始した。特に、ノード間通信の速度は専用並列計算機全体の性能の鍵の一つであり、そのためのシステムプログラムについては、その詳細を略決定した。また、ノードプロセッサの機能強化に付随するプログラミングアルゴリズムの開発、それに対するコンパイラの基本設計を推進した。物理学研究者は、詳細設計の各段階において、設計された並列計算機の物理学の具体的問題に対する実効性能評価のために、種々の問題の仮想ベンチマークテストを行った。またその結果を基に、各々の問題に対して最適なアルゴリズムを検討した。 以上の作業の成果として特記すべき点は以下のとおりである。 1)汎用RISCチップのスライドウィンドウ方式による機能強化。 大型科学計算に於ては、汎用RISCチップのキャッシュメモリが有効に機能せず、最高性能の1/10程度の能力しか発揮出来ない。これを解決するために、汎用RISCチップに擬似ベクトル機能をもたせるように機能強化することにし、その具体的方策として、平成4年度に考案したレジスタウィンドウ方式を一層発展させたスライドウィンドウ方式を具体化し、詳細な仕様を纏めるとともに具体的な論理設計の大部分を行った。 2)機能強化RISCチップのコンパイラー開発の基本方針の決定。 上記のような新方式の並列計算機向きの機能強化RISCチップを有効に利用するには、効率のよいプログラムのコンパイラー・アルゴリズムが必須である。これについても成案を得ることができ、さらにコンパイラーの雛形を得ることができた。 3)3次元ハイパークロスバ-ネットワークの採用。 性能、価格、実装面から、種々のデータ通信ネットワーク構成を比較検討することにより、3次元ハイパークロスバ-が最適との結論に達し、その詳細の仕様を纏め具体的な設計に着手した。 4)物理学の応用例に対する実効速度の高速化。 格子QCDのプログラムの中で一番重要な部分に対して、仮想ベンチマークを行ない、上記1)の機能強化が必要なことが明らかし、さらに、上記1)、2)、3)の詳細な検討の結果、並列計算機全体としての実効速度が最高速度の65%程度まで向上させることが可能となった。これは、並列処理システムとしては特記すべきことである。 5)最高速度300GFLOPSの詳細設計進行中。 上記の点を含め、デバッグ、メインテナンス、実装等諸々の点を詳細に考察し、最高速度300GFLOPSの性能の並列計算機の詳細な設計が進行中である。 6)最高速度600GFLOPS及び1.2TFLOPSも技術的に可能。 ノード・プロセッサ数を2倍、4倍に増加させることにより、最高速度600GFLOPSさらには1.2TFLOPSの並列計算機は現状の汎用大型機の上位機種と同程度の大きさ及び電力で技術的に製作可能であるとの結論に達し、その実現のために現状で可能な範囲での拡張性を用意している。
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