研究課題/領域番号 |
06041002
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
太田 幸雄 北海道大学, 工学部, 教授 (00100058)
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研究分担者 |
クーシェフ M. ノリリスク実験センター, 室長
レフチェンコ G. ロシア科学アカデミーヤクーツク永久凍土研究所, 研究員
マカロフ V. ロシア科学アカデミーヤクーツク永久凍土研究所, 部長
山形 定 北海道大学, 工学部, 助手 (80220242)
村尾 直人 北海道大学, 工学部, 助教授 (00190869)
KOUCHTCHEV M. Experimental Center of Norilsk Mining and Metallurgical Works, Chief of Laborato
レフチエンコ G. ロシア科学アカデミー, ヤクーツク永久凍土研究所, 研究員
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
9,200千円 (直接経費: 9,200千円)
1995年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
1994年度: 4,700千円 (直接経費: 4,700千円)
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キーワード | シベリア湿原 / 二酸化硫黄 / 二酸化窒素 / 硫酸粒子 / 黒色純炭素粒子 / 有機物粒子 / ヤク-ツク / ノリリスク / シベリア湿原都市域 / 北極圏大気環境汚染 / 大気中濃度測定 / 大気浮遊微粒子 / 硝酸ガス |
研究概要 |
本研究では、平成5年の夏季から、ロシア連邦サハ共和国ヤク-ツク市、チクシー市およびロシア共和国クラスノヤルスク州ノリリスク市において、大気中の浮遊微粒子(大気エアロゾル)および二酸化硫黄(SO_2)、硝酸(HNO_3)および塩化水素(HC1)ガスの半月ないしは一月ごとの連続サンプリングおよび分析を行っている。大気エアロゾルはテフロンフィルターおよび石英繊維フィルターにより捕集しており、一方ガス成分については、各々のガス成分に対する反応試薬を含浸させたろ紙により捕集をおこなっている。ヤク-ツク永久凍土研究所のマカロフ、レフチェンコおよびノリリスク実験センターのク-シェフが、現地でのサンプルの交換およびサンプラーのメンテナンスを行っており、我々(太田、村尾、山形等)も平成5〜7年の夏季にヤク-ツク、チクシー、ノリリスクを訪れ、サンプラーの整備・点検を行い、サンプリングの問題点等についても検討・討論を行ってきた。また、夏季にハバロフスク市、ヤク-ツク市およびノリリスク市において、分子拡散サンプラーにより大気中のSO_2およびNO_2濃度分布の測定も行った。さらに、平成7年の夏季には、ヤク-ツク、チクシー、ノリリスクの市内および郊外の数地点において、土壌を採取し、実験室(札幌)に持ち帰った。現在それらの土壌中の酸性成分および重金属成分を分析中である。 これまでの測定結果では、まず、夏季の各都市域でのSO_2およびNO_2濃度は、ハバロフスク市およびヤク-ツク市では、どちらの濃度も札幌市の郊外程度の比較的低い濃度であった。一方ノリリスク市では、NO_2濃度はやはり札幌市の郊外程度の低い濃度であったが、SO_2濃度については非常に高く、平成5年の夏季には11〜44ppbvの濃度となり、さらに平成7年の夏季には、大気が安定な状態にあったために恐らく200ppbv程度という非常な高濃度を示した。これは、ノリリスク市がロシアにおける最大のニッケルおよび銅の選鉱・精錬都市であり、硫化ニッケルおよび硫化銅等の鉱石からの精錬の際に発生する多量の二酸化硫黄が、その後まったく除去されずに大気中に放出されているためである。ノリリスク市近辺の森林はこの大量に排出されるSO_2のためにかなり枯死しており、今後の排出源対策が必須である。 大気エアロゾルの各成分濃度については、フィルター捕集されたエアロゾルサンプルを札幌まで持ち帰り、化学分析を行った。その結果、ヤク-ツクでは、微小粒子(粒径2μm以下の浮遊微粒子)はほとんど黒色純炭素と有機物のいわゆる炭素微粒子で構成されており、その大気中の濃度はほぼ札幌と同程度の値を示していた。これは、ヤク-ツク市内の一部で石炭炊きボイラーを使用していること、および郊外の別荘地域で薪・柴を暖房厨房に使用しているためと思われる。一方、チクシー市の郊外での微小大気エアロゾルの濃度は、ヤク-ツク市に比べて十分の一程度の低濃度であったが、成分的には、有機物と硫酸イオン成分が多く、またそれらの濃度が冬〜春季に増加していた。これは、同時期に北極海周辺に発生する煙霧層(アークティックヘイズ)の流入があるためではないかと思われる。ノリリスク市内における微小大気エアロゾル濃度は、札幌市内とほぼ同程度の濃度であるが、その中に占める硫酸イオン成分の濃度が非常に高い。これは、上述したようにニッケルおよび銅の精錬過程において硫酸粒子が大量に排出されているためと考えられる。 大気中のガス成分の連続測定結果では、ヤク-ツク、チクシー、ノリリスクともに硝酸および塩化水素ガス濃度は札幌の郊外以下の低濃度であった。一方二酸化硫黄ガス濃度については、冬季に炭酸ナトリウム含浸ろ紙による捕集効率が極端に低下することが分かった。これは、シベリアの冬季においては、大気中の絶対湿度(総水蒸気量)が非常に低下するためであると思われ、現在、多孔質の二重テフロン管を用いた加湿装置を取り付けて、捕集効率の改善を図っている。 今後、土壌分析をも含めたこれらの分析結果と流跡線解析および発生源データを基に、ノリリスクを始めとするロシア・シベリアの工業地帯から排出された汚染物質が、長距離輸送された結果、北極圏の環境に及ぼす影響の評価を行っていく予定である。
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