研究課題/領域番号 |
06041008
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西平 守孝 東北大学, 理学部, 教授 (80004357)
|
研究分担者 |
PAPHAVASIT N チュラロンコン大学, 海洋学部, 準教授
仲宗根 幸男 琉球大学, 教育学部, 教授 (60044913)
鹿野 秀一 東北大学, 理学部, 助手 (70154185)
鈴木 孝男 東北大学, 理学部, 助手 (10124588)
PAPHAVASIT Nittharatana Chulalongkorn University
|
研究期間 (年度) |
1994
|
研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
|
配分額 *注記 |
4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
1994年度: 4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
|
キーワード | マングローブ湿地 / 底生動物 / 生物多様性 / 生息場所 / 干潟 / タイ国 |
研究概要 |
1.タイ国、サムットソンクラン県クロング・コーンのマングローブ湿地で重点的に調査を行った。マングローブ林前面の干潟から林内に向けて2本のライン・トランゼクトを設定し、地形の測定とそれに対応した植生分布を調べ、動物群集の把握という観点からいくつかの生息場所に類型化した。それに基づいてそれぞれのライン・トランゼクトに、マングローブ林の外の干潟、マングローブ林前面に苗木を植えた干潟、マングローブ林の海側の縁、マングローブ林内、マングローブ林の陸側の縁辺部などの5〜6地点を集中的調査区として設定し、継続観察用の方形区を確立した。一方、ラノンにおいて動物群集の概要観察調査を行った。 2.集中的調査区において、干潮干出時に照度、気温、湿度、底質の地温とEh、間隙水の塩分とpHを現場で測定した。マングローブ林内の相対照度は干潟の約3%で、気温、地温ともに干潟より低かった。間隙水中の塩分は干潟より林内の方がわずかに高かった。これらの環境要因はマングローブ林内と干潟で異なったが、林内の調査区間では大きな差は見られなかった。間隙水の栄養塩類はチュラロンコン大学で分析した。窒素およびリンの無機塩類は林内の間隙水中では干潟よりも低かった。また、底質の土壌の有機物含量と有機態炭素、有機態窒素濃度を帰国後測定したところ、干潟より林内で高かった。 データロッガ-をマングローブ林内の2ヵ所と干潟の1ヵ所に設置しして、温度の連続記録を開始した。平成7年度の国際学術調査で、データロッガ-を回収し、1年間の温度変化を解析する。 3.ライン・トランゼクト上の各生息場所で、コドラート法による底生動物群集の定量的調査を行った。さらにその周辺で任意観察と採集も合わせて行った。生息場所の違いによる群集構造の違いを把握するために、現在サンプルを選別し、同定・計数を進めているところである。外側の干潟では、テッポウエビ科、シャコ科、スナガニ科の甲殻類が多く見られた。また、多毛類やフネガイ科の二枚貝も多く生息していた。マングローブ林の海側の外縁部では干潟の生物組成に似ていたが、陸側の縁辺部ではオカミミガイ科やアマオブネガイ科の巻き貝が木の幹、枯れた枝や葉、土壌表面などさまざまな所で見られた。スナガニ科とベンケイガニ亜科のカニ類もマングローブの林内に多く生息していた。カニについてはアロメトリーと胃内容物を調べるためのサンプルを採取した。 また、マングローブの樹木に付着したり、幹の上に生息するフジツボやタマキビ科の巻き貝についても、底質の中と上とは分けて定性的・定量的に調査した。 4.養殖地の造成や農耕などによって攪乱されたマングローブ湿地に再植林した後の底生動物群集の再定着の過程について調査する予定でいたが、残念なことに適当な再植林地が得られなかった。しかしながら、マングローブ林前面の干潟に新たにマングローブが侵出したり、苗木を植えた地点を調査できた。 大型底生動物の伝統的利用の状況、栽培漁業の推移や開発によるマングローブ湿地の減少と攪乱について聞き取り調査を行った。 5.現在サムットソンクランの海岸部で重要な資源動物のひとつであるフネガイ科の二枚貝(Anadara)について、干潟からマングローブ林内までのいくつかの生息場所に、殻長の計測を行った二枚貝を土の入ったバスケットに放した実験個体群を設定した。今後個体数と殻長の変化を調査することによって、各生息地における生存率と成長の違いを比較できるようにした。 オカミミガイ科の巻き貝2種について生息場所と殻長を測定し、マークを施した後、底質上に放し、移動や生息場所の選択性を記録した。 また、フジツボの加入および成長過程を調べるために、干潟からマングローブ林内の標高の違った地点にプラスチック製のポールを設置した。今後、時間間隔を置いてポールを回収し、フシツボの移入位置、密度、大きさを調べる予定である。 その他に、マングローブ林を貫いて流れる水路のプランクトンと水質についても定期的に調査を行っている。
|