研究概要 |
採取試料到着後十分な日数がないため室内作業もあまり進展していない。しかしながらいくつかの興味深い成果も得られた。そのうち,2つについて簡単に述べる。 1)調査地域南端部に位置するKalbonu Complexの石灰質泥岩からこれまでテ-チス域からはまったく報告のない前期白亜紀Valangianの放散虫動物化石群が得られた。この動物群はオーストラリア北西海域のODPあるいはDSDPボーリングコア中に認められるいわゆる“Nsn-Ictheys"タイプに比較されるものである。この発見により従来チモール島の中生界はゴンドワナ大陸緑辺海域の堆積物であるという説がはじめて化石により確認できたことになる。 2)Kikneno地域の異地性石灰質岩から保存良好な三畳紀コノドントと放散虫化石が得られた。この石灰質岩も白亜紀同様オーストラリア大陸陸棚堆積物と同様の起源をもつと考えられ,チモール島三畳紀石灰質岩もゴンドワナ大陸緑辺域の堆積物であることが明らかとなった。 3年計画で申請した本研究も結局は単年度のみの研究となってしまい当初の研究計画はほとんど達成できず,きわめて残念無念である。今後は申請直前で研究年次の切りつめなど絶対にないように希望したい。 今後の計画については、幸いに次年度国際学術研究も内定しており今年度調査研究のできなかった地域,例えば,スマトラ・スラベシ・ジャワ島での岩石試料の採取を行いたい。特にチモール島とも位置的に近い,ジャワ・スラベシ島の白亜紀放散虫動物群の検討はユーラシア大陸とオーストラリア大陸との衝突・付加プロセスを解明するために必要不可欠な地域であり,ぜひ調査検討を行いたい。また,今回インドネシア国からの事務手続にきわめて長い時間を費さねばならなかったために十分に行えなかったKiknenc地域の地質調査特に放散虫岩と否放散虫岩及びオフィオライトや弱度成岩との層方及び構造地質学的な検討はチモール島のみならず周辺島孤域の構造発達を議論するために重要であり,次年度の重点課題としたい。
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