研究課題/領域番号 |
06041038
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
磯崎 行雄 東京工業大学, 理学部, 助教授 (90144914)
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研究分担者 |
寺林 優 香川大学, 教育学部, 助手 (40243745)
加藤 泰浩 山口大学, 理学部, 助手 (40221882)
木村 学 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (80153188)
丸山 茂徳 東京工業大学, 理学部, 教授 (50111737)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
1994年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
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キーワード | 付加体 / チャート / MORB / BIF / OIB / 熱水 / プリューム / 造山帯 |
研究概要 |
表題地域の西オーストラリア、ピルバラ地塊の太古代緑色岩帯には、塩基性火成岩起源の緑色岩と、それらに密接に伴った種々の太古代堆積岩類が産する。従来、これらの岩石は大陸性基盤の上に順次堆積・累重した現地性の堆積体をなすと理解されてきた。しかし、今回の国際学術研究計画による検討の結果、緑色岩体の地質体の多くが太古代の付加体であることが解明されてきた。ここでは、重点的に調査をすすめたクリーバビル地域、マ-ブルバ-地域、キャメルクリーク地域そしてノースポール地域における検討結果をまとめて報告する。 顕生代の付加体と同様、海洋プレート層序を保存した岩石・地層群が野外で認定され、またそれらの岩石・地層のなすデュープレックス構造が見い出されたことから、上記4地域の緑色岩帯の地質体が太古代の付加体の一部をなすことが初めて明示された。今回検討した地域以外のピルバラ地階緑色岩帯も同様の特徴を持つと予想され、太古代の緑色岩帯のほとんどは過去の海洋プレート沈み込み型造山帯をなすと理解される。 一方、顕生代および太古代の付加体の相違点として以下の諸点が明らかになった。1)太古代付加体中には、厚い緑色岩ユニット、特に顕生代では極めてまれな厚いMORBが、特徴的に産する。2)太古代付加体中には顕生代には例のないコマチアイトがかなり頻繁に産する。3)太古代チャートの多くは層状であるが、顕生代チャートのような泥質薄層を挟むものは認められない。また、しばしば大量の鉄鉱層(BIF)やバライトなどの金属鉱床を下部層準に伴う。4)太古代付加体中の陸源粗粒砕屑岩の量は少なく、中にはほとんど含まれない例もある。この点は大量の砂岩・泥岩からなる顕生代付加体とは極めて対照的である。これらの相違点は、太古代当時の海洋プレートの構成(厚さ、内部構造)が顕生代のものと本質的な違いを持っていたことや、まだ十分に大陸が成長していなかったことに由来すると考えられる。また鉄やバリウム等の金属あるいは珪素の、当時の地球表層における存在度や循環パターンの違いが堆積物の特徴に反映していると推定される。 また、上記4地域の太古代付加体はほぼ同時期(約33-35億年前)に形成されたと考えられるが、それらを相互比較すると次のような明瞭な相違点が認められる。クリーバビル付加体は、MORB緑色岩・BIF+チャート・粗粒砕屑岩から構成されるユニットが繰り返し累重したスライトパイルをなす。その緑色岩の化学組成が顕生代のものより鉄に富み。またそれは調和するように上位にBIFを伴うが、3地域の例の中ではよく保存された海洋プレート層序をもち、最も顕生代付加体に類似する。これに対し、マ-ブルバ-・キャメルクリーク付加体にはコマチアイト岩体が伴われたり、また50m厚の層状チャートは全く鉄鉱層を伴わないものの、その化学組成は熱水との強い関連を示唆するなどの個性が認められる。さらに、ノースポール付加体については、Tチャートと呼ばれる脈に密接したバライト鉱床を層状チャートの最下位に伴うこと、強い熱水変質を受けた緑色岩を産すること、および明瞭な陸源粗粒砕屑岩はほとんど含まれないことなど、前2者のどちらとも異なる特徴をもつ。このような太古代付加体がもつ多様性は、顕生代のそれよりも大きい。おそらく付加に関与した2枚のプレート上面の起伏や構成物の多様性、そして太古代の付加プロセスの特異性に由来するのであろう。クリーバビル付加体は、厚いMORBと直上の海嶺熱水堆積物がタ-ビダイトとともに付加したもので、底付け作用が深いレベルまで及んだことを意味している。これに対して、マ-ブルバ-とノースポール付加体は、MORBよりも、むしろ海洋プレート上の突起物としてのホットスポット海山や海台起源の緑色岩の大量付加を意味しているのかもしれない。 以上のように、本研究によって従来の太古代造山帯に関する理解・知識を一新することができた。今後これらの成果の英文での公表に勤めたい。最後に本研究を支えて下さった当局の御理解に感謝する。
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