研究分担者 |
ディエス ドゥグラス ホンデュラス国立自治大学, 歯学部, 助手
バラオナ フランシスコ ホンデュラス国立自治大学, 歯学部, 教授
本田 武司 福岡歯科大学, 教授 (60099067)
DIEZ Douglas Department of Oral & Maxillofacial Surgery, National University of Honduras Assi
ディアス ドウーグラス ホンデュラス国立自治大学, 歯学部, 助手
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研究概要 |
I顎関節症の背景に関する調査 (1)研究目的:顎関節症の発症原因の究明のため、顎関節症の発症頻度および発症に関連する疫学的調査歯の咬耗と顎関節下顎頭形態の検索を行った。 (2)対象:中米ホンデュラス山中に閉鎖社会を形成する先住少数民族で、日本人とルーツを同じくするヒカケ族、レンカ族インディオならびに同国民の大多数を占めるスペイン人と現地人の混血であるメスティーソを対象とした。その数は1994,1995年度の2年間で(1)メスチ-ソ249名、(2)ヒカケ族インディオ60名、(3)レンカ族インディオ27名で,このうちX線撮影は(1)では123名203顎関節、(2)では31名60顎関節、(3)では27名52顎関節に行った。 (3)結果:(i)疫学的調査-食物調査ではメスティーソの「軟らかいのを好む」が88/119名(73.9%)、硬いもの23/119名(19.4%)、「両方」8/119名(6.7%)に対し、ヒカケ族ではそれぞれ33/41名(80.5%)、6/41名(14.6%)、2/41(4.9%)であった。歯磨き習慣はメスティーソの「朝、就寝前」が103/119名(86.6%)、「朝のみ」5/119名(4.2%)、「就寝前」6/119名(5.0%)、「磨かない」5/119名(4.2%)に対し、ヒカケ族では各々18/44名(40.9%)、16/44名(36.4%)、0/44名(0%)、10/44名(22.7%)であった。また顎関節痛はメスティーソの「なし」84/119名(70.6%)、「あり」35/119名(29.9%)に対し、ヒカケ族では、各々20/44名(45.5%)、24/44名(54.5%)で半数以上に見られた。歯の咬耗はメスティーソでBroca分類のI:II:IIIの割合が3:8:2、ヒカケ族5:7:3、レンカ族では5:4:4であった。 (ii)X線像の下顎頭形態と歯の咬耗について:一般に全対象の下顎骨ならびに下顎頭を含めた骨格は日本人に比し同等か小さく、とくにヒカケ族についてはその傾向が大きかった。咀嚼機能程度の指標である歯の咬耗と顎運動機能の加齡に対する適応形態としての下顎頭の変化はメスティーソでは歯の咬耗が著明になるにしたがい、下顎頭の変化が通常形態のconvexからflatになるリモデリング傾向が見られた。同様の結果は1994年度の予備調査,米国スミソニアン博物
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館,ミシガン大学でのアメリカンインディアンの頭蓋骨94体172顎関節と歯の咬耗の調査でも得られたが、ヒカケ族に於いてはその傾向はなく、下顎頭形態は通常形態convexが最多を示し、歯の欠損例が大半であった。なおレンカ族では生活様式が類似するメスティーソと同様傾向であった。 (4)考察:顎関節症発症の背景として歯の咬合の関与が言われているが、ヒカケ族では農耕民族としてデンプン質の軟食を好み、歯磨き習慣は少なく,歯の咬耗の少ない顎関節への負荷が最小限の食生活の結果,顎関節は咬合咀嚼圧に適応が少ない状態を示し、顎関節症状の多発との関連性が示唆された。 2.顎関節下顎頭の骨変化と運動制限との関連性についての調査 (1)研究目的:前期1,の疫学的調査に関連してメスティーソにおける顎関節の実態を把握するため,その形態変化と機能障害の状態について調査した。 (2)対象ならびに方法:ホンデュラス国立自治大学の学生91名を対象とし,3種類の規格化したパノラマX線撮影を開口位20,30,40mmで行い,その所見から両側下顎頭の骨変化を判定し,個々の運動状態との関連性を検討した。 (3)結果:(i)下顎頭に運動制限を認めなかったグループは91例中11例(12.1%)で,そのなかの10例(90.9%)は両側に骨変化を認めず,1例(9.1%)のみに片側の骨変化がみられた。(ii)両側下顎頭に運動制限を認めたグループは91例中37例(40.7%)で,このうち25例(67.6%)は両側に骨変化を認め,12例(32.4%)には骨変化を認めなかった。(iii)両側下顎頭に骨変化を認めなかったグループは91例中21例(23.1%)であり、そのなかで12例(57.1%)は同時に両側の運動制限を認めず,9例(42.9%)はいずれかに運動制限を認めた。(iv)両側下顎頭に骨変化を認めたグループは91例中31例(34.1%)で,この中の22例(71.0%)に両側の運動制限を認め,9例(29.0%)に運動制限を認めなかった。 (4)考察:以上,両側下顎頭の運動性良好のものは骨変化が少なく,運動制限(+)のものでは骨変化が70%に推測される。また骨変化(-)でも約40%に運動制限(+)などメスティーソについての特徴的臨床像が得られた。 3.今後の展望:追跡調査によりヒカケ族の顎関節症状の多発傾向の背景を詳細に解明しうる事が期待される。 隠す
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