研究課題/領域番号 |
06041045
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
池谷 仙之 静岡大学, 理学部, 教授 (50022223)
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研究分担者 |
KING R.j. ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア), 助教授
SWANSON K.m. カンタベリー大学(ニュージランド), 講師
塚越 哲 東京大学, 総合研究資料館, 助手 (90212050)
田中 次郎 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (30167499)
和田 恵次 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (80127159)
向井 宏 北海道大学, 理学部, 教授 (00013590)
山口 寿之 千葉大学, 理学部, 助教授 (10101106)
ROSS R.M. 静岡大学, 理学部, 助手 (70252161)
阿部 勝巳 静岡大学, 理学部, 助教授 (80151091)
KING R.J. ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア), 助教授
SWANSON K.M. カンタベリー大学(ニュージーランド), 講師
DE Deckker P オーストラリア国立大学, 教授
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
17,300千円 (直接経費: 17,300千円)
1995年度: 8,400千円 (直接経費: 8,400千円)
1994年度: 8,900千円 (直接経費: 8,900千円)
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キーワード | 介形虫類 / 十脚類 / 蔓脚類 / 藻類 / 西部太平洋 / 生物地理 / 種分化 / 生きている化石 |
研究概要 |
日本列島沿岸およびオーストラリア・ニュージーランド海域の無脊椎動物相は、地質時代に存在したテチス海に起源をもつと考えられている。また両地域は遠く離れているにもかかわらず、分類学上、きわめて近縁な甲殻類が存在することも知られている。これらの地域を結ぶ沿岸性甲殻類の類似性と近縁性を解明し、地質時代を通じていかなる機構と過程のもとに現在の生物地理が成立したかを明らかにすることを目的としている。オーストラリア大陸(タスマニア島を含む)沿岸のほぼ全域における調査をほぼ完了したが、この種の研究は個体の抽出、分類学的検討に膨大な時間を要するために、これまでになされた研究はその一部にすきない。今後、これらの標本に基づいて、個々の分類群ごとに詳しい研究がなされることになる。以下には、これまでになされた結果の一部を報告する。 介形虫類:オーストラリア大陸沿岸のほぼ全域より約250地点の含介形虫試料を採取した。これらの試料は主として岩礁地および砂泥地に生育する海草および海藻を採集し、それらを水洗し、ふるい分けすることによって葉上に生息する微小生物を濃集したものである。これらの試料から介形虫個体を顕微鏡下で抽出し、分類する作業が進行している。タスマニア島を含む東南部については、個体の抽出と分類がほぼ完了し、群集解析が行われた。その結果、ほぼ気候区分に対応した生物地理区、特に海藻の分布様式に合致した介形虫動物群が存在することが明らかにされた。また、タスマニア島周辺部の介形虫群集に関しては、これまでに研究例はなく、このプロジェクトによってはじめて概要が明らかにされた。その他の地域に関しては、目下、個体の抽出と分類を行っている。また、オーストラリア大陸沿岸各地において、トラップによってミオドコ-パが採集された。現在、日本産種との比較形態学的研究が行われている。 介形虫類(生きている化石マナワ):ニュージランドのリ-臨海実験所で、潜水によって「生きている化石」といわれる介形虫マナワの生体標本(十数個体)の採集に成功した。これらの生態観察が世界ではじめてビデオ観察され、新しい知見が得られた。同標本はさらに透過型、走査型顕微鏡を駆使して、詳しい観察がなされ、殻および付属肢等の形態解析が行われると共に、生化学的検討がなされる予定である。 蔓脚類:主として潮間帯のクロフジツボ類に焦点を合わせ、日本近海産の8種とオーストラリア産の4種について、生態および形態解析を行うと共に互いの遺伝的関係を知るためにmtDNAの塩基配列を調べつつある。これによって、西太平洋地域に赤道を挟んで南北に分布する両集団の種分化とその成立過程が解明されると期待される。 十脚類(エビ):主として海草にアソシエイトする「もえび」類の生物地理学的考察を行っている。ダイビングによる海草帯でのプランクトンネット採集により集められた個体群は、熱帯海草の分布と極めてよく一致することが知られた。即ち、西太平洋海岸の低緯度から高緯度に向かって多様度が減少し、さらに、南極海では「もえび」科に替わって「テナガエビ」科が出現することが知られた。また、インド洋岸では海草の種類も西太平洋岸と異なり、「もえび」類も特異な種類が発見された。詳しい種の同定は目下継続中であるが、生物地理分布に対する新知見が得られると期待される。 十脚類(カニ):西太平洋地域のマングローブ帯に生息するスナガニ科の生息特性を分類学的位置および地理的分布と関連づけて類型化し、さらにwaving displayの有無とその行動様式を現地で観察すると共に、ビデオカメラで捉え、それらを総合して種分化と系統関係を考察している。また、日本のヤマトオサガニと同種とされているオーストラリア西岸種との形態的特徴を比較し、さらに、mtDNAの塩基配列による検討を進めている。現在までのところ、両種は別種として扱われるべきであるとの根拠が得られている。 海藻類:主として汽水域に生育するアヤギヌについて、同一日本種との生殖的和合性を検討し、種内の種以下のレベルでの分化過程を考察している。また、日本固有属であるスギモク属に最も類縁すると考えられているAcrocarpia,Cualocyctis属について、それらの分類学的類似性および系統学的検討を進め、スギモク属の帰属を明らかにできると期待される。
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